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文献詳細

雑誌文献

生体の科学38巻4号

1987年08月発行

特集 視覚初期過程の分子機構

視細胞興奮発生の分子機構

著者: 井上宏子1 吉岡亨1

所属機関: 1早稲田大学人間科学部

ページ範囲:P.291 - P.298

文献概要

 視細胞が光を受容してから電位を発生するまでの分子機構の中で,以前から研究され,なおかつ現在でも未解決の問題は,細胞内セカンドメッセンジャーについてである。よく知られているように,脊椎動物の視細胞のうちの桿体ではディスク膜上にあるロドプシンが光を吸収した後,外節膜上にあるNaチャンネルが閉じて過分極応答を示す。したがって光情報をディスク膜から視細胞膜へ伝える細胞内情報伝達物質(メッセンジャー)が必要であることになる。また,脊椎動物の錐体や無脊椎動物の視細胞ではロドプシンとイオンチャンネルは近接しており,メッセンジャーは一見不必要に見える。しかしWong1)やBacigalupo & Lisman2)が示唆しているように,1フォトンは約1,000個のイオンチャンネルを開くと考えられており,そこでは明らかに情報の増幅が起こっている。したがって,たとえばロドプシン→細胞内膜系→イオンチャンネルという経路で光情報が伝達されるとすれば,メッセンジャーを考えることは妥当である。
 そこでこうした役割を担う物質をさがす試みがなされてきたわけであるが,その物質が細胞内メッセンジャー(いわゆるセカンドメッセンジャー)であるためには少なくとも次のような二つの条件を満足しなければならないと考えられる。(1)その物質の視細胞内濃度が光照射によって急速に変化し,光照射停止後元のレベルに戻る。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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