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文献詳細

雑誌文献

生体の科学38巻4号

1987年08月発行

文献概要

連載講座 脳の可塑性の物質的基礎

リセプター,Ca2+,細胞内伝達系の役割

著者: 久場健司1

所属機関: 1佐賀医科大学生理学教室

ページ範囲:P.305 - P.315

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 学習や記憶の機序は,外界からの感覚入力により,脳内のある特定の神経回路の活動が永続的に変化したり,新しい神経回路が作られることによると考えられる。神経回路での情報伝達は,神経軸索や長い樹状突起でのインパルスの伝導と神経細胞間のシナプス後電位による伝達により行われるが,前者は全か無かの法則に従うので,神経回路の活動の調節はシナプスでなされることになる。したがって,学習や記憶の基礎過程は,シナプス伝達効率の永続的変化やシナプス結合の変化にあるといえる。前者をシナプス伝達の可塑性,後者をシナプス結合の可塑性という。ここでは前者について述べる。"可塑性"という言葉は,本来不可逆的に変化する事象を意味するが,シナプスの可塑性ではシナプス伝達の効率の変化が可逆的であってもそれが長く続く場合にも使われる。
 学習や記憶の研究は,長い間,心理学者や神経回路を研究する神経生理学者や解剖学者によりなされていたが,ここ10数年の間に研究方法の進歩とともにシナプスの可塑性を物質レベルで調べることが可能になり,神経系の基本単位である神経細胞膜やシナプスの研究を行う生理学者や,分子を扱う生化学者の大きな関心を引きはじめ,シナプスの可塑性の機序の研究に,数々の新しい展開がなされつつある1-3)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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