文献詳細
文献概要
解説
網膜変性症マウス(rds)の発育過程における視物質の生合成変化とその分布
著者: 臼倉治郎1
所属機関: 1東京大学医学部解剖学教室
ページ範囲:P.322 - P.331
文献購入ページに移動 近交系マウス020/A系には進行性網膜変性症を引き起こすミュータントが存在する1)。変性の進行速度が遅いことから,従来より知られている網膜変性症マウス(rd)2)と区別して,rds(retinal degeneration slow)マウスと呼ばれている。これらの網膜はヒトの色素性網膜炎(retinitis pigmentosa)のモデル3-7)ともなるので,最近では眼科領域において広く研究対象となっている。rdsではrd同様網膜中の視細胞に著しい変性が起こるのが特徴であるが,病気の進行速度だけではなく,遺伝的,形態的,機能的にも差異が認められる。まず第一に,rdでは変性を引き起こす遺伝子が5番の染色体にのっているのに対し,rdsでは17番の染色体に異常が観察される1)。一方,形態的には発生初期のrdマウス視細胞は外節を派生させるが,rdsの視細胞は全発育過程を通して外節を形成しない8-11)。また,外節が派生しないにもかかわらず光に対し応答をし12),光照射により活性化された脱リン酸化酵素(cGMP-PDE)により細胞内cGMP濃度の低下が報告されている10)。視物質(ロドプシン)は分光学的には検出されていないが,そのアポ蛋白であるオプシンは免疫学的に存在が確認されている13)。そして,わずかでも光に対し応答することはrds視細胞内においてオプシンはロドプシンとして存在するものと考えられる。
掲載誌情報