文献詳細
特集 細胞生物学における免疫実験マニュアル
抗体の作製と吟味
文献概要
1977年西塚らによって発見されたProtein Kinase C(以下PKCと略)は細胞膜のイノシトールリン脂質代謝回転と共役してホルモンや神経伝達物質などのシグナルを細胞内伝達するセカンドメッセンジャー系に重要な役割を持つことが明らかになってきている1)。PKCはまた細胞の増殖・分化・機能発現などにも関与し,生体情報伝達に中心的な役割を演じている酵素であることが示唆されており,医学・生物学の各領域の注目を集めている。PKCは脳に高濃度に存在しているものの他の臓器にも広く分布しており,その局在を明らかにすることはPKCの機能を解明する上で重要な問題と考えられる。今まで,ブタ2)やラット3)脳より精製したPKCを抗原としてポリクローナル抗体の作製が試みられ,グリア細胞や神経終末でPKC免疫反応が検出されているが,神経細胞体はほとんど染色されず,必ずしも十分なものとはいえなかった。また,PKCのDNA配列の解析からPKCには少なくとも3種類のサブタイプ(α,β,γ)が存在し,βにはさらにβ1,β2の亜型の存在が示唆されている。精製PKCを抗原として作製したポリクローナル抗体ではPKCのサブタイプを識別することが困難であり,PKCに対するモノクローナル抗体の作製が必要とされる。
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