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文献詳細

雑誌文献

生体の科学38巻5号

1987年10月発行

文献概要

特集 細胞生物学における免疫実験マニュアル 抗体の作製と吟味

特定細胞に対するモノクローナル抗体作製法—神経細胞

著者: 田中英明1

所属機関: 1群馬大学医学部薬理学教室

ページ範囲:P.391 - P.393

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 神経系は多種類の神経細胞が特異的な結合を形成して神経回路網として機能する。したがって,発生過程においては選択的なシナプス形成を可能にする認識分子や標識分子,さらにはそのシナプスを維持するための栄養因子など神経細胞種ごとに特異な分子が発現されていることが期待される。モノクローナル抗体法は未精製のサンプルをもとにある分子に対する特異抗体を得ることを可能にしているため,このような未知の分子を検出する強力な方法である。たしかに,ヒルの神経系のホモジネートを抗原にして神経節の個々の神経細胞を染めわけるモノクローナル抗体がとれた例1)や,ニワトリ胚の網膜細胞を抗原としてTOPと呼ばれる抗原分子が網膜内で片寄った分布をしていることを示した例2)などは,モノクローナル抗体法を神経系に応用した初期の仕事であり,モノクローナル抗体法の有効性が大変印象的であった。しかしながら,このような未精製のサンプルをもとに偶然性によって抗体を得るショットガン方式では抗原性の強いものや存在量の多い分子に対する抗体ばかり取れてきて目的とする抗体を得る可能性は非常に少ない。筆者の場合,運動ニューロンやそのサブタイプは,それぞれ異なる膜表面抗原を持っていることを期待してそれらを検出する抗体を取るため,ニワトリ胚の脊髄全体または膜分画を抗原にしてすでに10回以上細胞融合を行ったが,運動ニューロンに選択性をもつ抗体はただ一つ取れただけである3)(図1)。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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