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文献詳細

雑誌文献

生体の科学38巻6号

1987年12月発行

文献概要

実験講座

海馬神経細胞での細胞内Ca濃度の測定

著者: 小倉明彦1 工藤佳久1

所属機関: 1三菱化成生命科学研究所脳神経科学部

ページ範囲:P.597 - P.603

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 生きている細胞は,高いエネルギーコストを払って細胞質内の遊離カルシウムイオン濃度(以下[Ca2+]iと略)を10−7Mレベルあるいはそれ以下に保っている。そしていざ刺激がきたとき,104倍にも及ぶ濃度勾配にしたがってどっとCa2+を流れ込ませ,それを細胞内でのシグナルとして用いる。神経細胞も例外ではなく,神経伝達物質の放出や,Ca2+依存性の酵素群の活性化を介しての細胞機能の調節を行っているとされている。確かに細胞外環境のCa2+濃度を変えたり細胞内にCa2+やEGTAを入れて[Ca2+]iを操作すると,多くの細胞機能が影響を受ける。しかし,だからといって実際にそれらの機能がみな[Ca2+]iによって調節されていると断言はできない。たとえ話でいえば,「ナイフで刺されると人は死ぬ。ではこの間うちのおじいちゃんが80歳で死んだのはナイフで刺されたからか。」そうとばかりはいえない。[Ca2+]iが実際に調節因子として働いているとするためには,その刺激の下で[Ca2+]iが本当に動くのを確かめておかなければならない。生きた標本での[Ca2+]iの簡便かつ実時間的な測定法が求められるゆえんである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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