icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学39巻1号

1988年02月発行

特集 遺伝子疾患解析の発展

アルツハイマー病

著者: 吉川和明1

所属機関: 1東京都精神医学総合研究所分子生物学研究室

ページ範囲:P.4 - P.8

文献概要

 アルツハイマー病(Alzheimer's disease,以下ADと略する)は初老期から老年期に始まる進行性の記憶障害と知能低下を特徴とする中枢神経系の変性疾患である。疾患名は進行性の痴呆を主症状とする初老期の女性の剖検例を最初に報告(1907年)したドイツの神経科医AloisAlzheimerに由来する。今日ではADの範疇には初老期だけでなく老年期に発症するアルツハイマー型老年痴呆(Senile dementia of the Alzheimer type)も含まれ,この病型の方が初老期発症のものに比べて圧倒的に多い。ADの一部には常染色体優性形式で遺伝する家族性アルツハイマー病(Familial Alzheimer's Disease,FADと略)があるが,大部分は散発性(sporadic)に発症する。ADにみられる病理学的所見としては高度の神経細胞の脱落に伴う脳の萎縮とともに神経原線維変化(neurofibrillary tangles),老人斑(senile plaques),アミロイド・アンギオパチー(amyloid angiopathy)などの特徴的な変化が見られる。
 ADの病因を考える上で示唆に富む疾患はダウン症である。40歳以上に加齢が進んだダウン症患者の脳には上記のAD脳に見られる異常所見が出現する。そのためダウン症はADの類縁疾患としてADの病因を考える上で重要視されてきた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら