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特集 遺伝子疾患解析の発展
色覚異常
著者: 徳永史生1
所属機関: 1東北大学理学部物理学教室
ページ範囲:P.9 - P.17
文献購入ページに移動人間が色をどのようにして識別するかという問題に関しては,古くから多くの哲学者,科学者の関心の対象となって来た。Youngは混色を基礎として,網膜の各点で3種の受容器さえあればすべての色が感受しうるという説を立てた。Youngの考え方は後に,Helmholtzによって定量化され,Young-Helmholtzの三原色説と呼ばれている。ヒトの目には赤,緑,青の3色をそれぞれ受容する3種類の視細胞があり,外界の光はこの三つの受容器にそれぞれ何%かずつに振り分けられ,これらの情報は脳の中で混合されていろいろな色が知覚できると考えられてきた。
1960年代に実験により,ヒト,サルなどの錐体において三原色説が当てはまることが実証された。その1例がWaldの行った選択的順応法である1)。順応光として黄色光(>550nm),紫色光(<462nm+>645nm),青色光(<500nm)が選ばれた。これはたとえば,黄色の順応光で測定部位を照射すると,長波長側に感度の高い赤受容体と緑受容体とが選択的に速やかに退色して,その状態で分光感度を求めると,青受容体のそれが測定できるという仮定に立っている。図1はヒトの中心窩について黄,紫,青色光での順応で,それぞれの吸収極大を持つ,青,緑,赤受容体の分光感度が得られたことを示している。
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