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文献詳細

雑誌文献

生体の科学39巻1号

1988年02月発行

文献概要

連載講座 脳の可塑性の物質的基礎

中枢コリナージックニューロンの生存を支える神経成長因子

著者: 畠中寛1

所属機関: 1三菱化成生命科学研究所脳神経科学研究部

ページ範囲:P.48 - P.56

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 ニューロンの連絡網の巨大さは,研究者をして,その深い森へ分け入ることにたじろがせるものがある。ヒトの脳のニューロンの総数は,1012個とも云われ,シナプスと呼ばれるニューロン間のつなぎかえスイッチは1015個も点在していると云う1)。この数は,まさに銀河系の星の数に匹敵すると云う。この膨大な数の神経情報接点の存在は,脳神経系のもつ秀れた情報処理能力の源となっている。このように複雑な連絡網は,はたしてどのように構築されるのであろうか。ニューロン間の連絡の形成もまた遺伝上子発現の制約下にあることは云うまでもない。しかし,ニューロン間の連絡はまた後天的なつなぎ換えを可能とするシステムでもあるのである。これを可塑性と呼ぶが,この可塑性に関わる可能性をもつ因子の存在が,最近注目をあびるようになってきた。神経栄養因子(Neurothrophic Factor)2-6)と総称される,これら一群のタンパク質は,脳神経系のシステム形成のごく初期の時期にのみ働き,ニューロンの分化,シナプスの形成に作用するものとして知られていたものである。しかし,最近になって,ニューロンの長い一生をその生存を維持させる方向での作用が明確にされるにおよび,一つの可能性としてシナプス可塑性にも関与するのではないかと云われるようになった。
 神経栄養因子は,脳神経系以外の組織においては細胞成長因子と呼ばれる一群のタンパク質の仲間である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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