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文献詳細

雑誌文献

生体の科学39巻2号

1988年04月発行

文献概要

特集 生体運動の分子機構/研究の発展

軸索輸送:チューブリン・キネシン系

著者: 室伏擴1

所属機関: 1東京大学理学部生物化学教室

ページ範囲:P.106 - P.109

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 神経細胞は軸索(axon)という非常に長い突起を持つ高度に分化した細胞である。神経細胞の細胞体の大きさは数μmから百数十μmであるのに対し,軸索の長さは1mにも及ぶ場合がある。このような特殊な形態を取る神経細胞が,全体として調和の取れた生命活動を営むための機構の一つが軸索輸送(axonal transport)である。軸索輸送は細胞体から軸索末端への物質の輸送である順行性輸送,および,これとは逆の逆行性輸送の二つに分類される。単一軸索内で,両者は同時に行われている。順行性輸送の目的は,軸索そのものの構造の維持,および軸索末端のシナプスの機能の維持にある。チューブリン,アクチン,ニューロフィラメントタンパク質などの輸送は前者と関連しており,神経伝達物質の合成に必要な酵素やペプチド性神経伝達物質そのものの輸送は,後者の例である。一方,逆行性輸送の場合,シナプス部位で不用になった物質や,エンドサイトーシスによって取り込まれた物質が細胞体に送られる。逆行性輸送は,シナプスから細胞体への情報伝達とも関連していると考えられている。
 軸索輸送は,その速度という点から大きく二つに分類される。すなわち,数mm/日という遅い軸索輸送と25〜50cm/日という速い軸索輸送である。順行性輸送の場合,細胞骨格系タンパク質の輸送は前者に相当する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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