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文献詳細

雑誌文献

生体の科学39巻2号

1988年04月発行

文献概要

特集 生体運動の分子機構/研究の発展

往復原形質流動:粘菌

著者: 秦野節司1

所属機関: 1名古屋大学理学部分子生物学教室

ページ範囲:P.138 - P.142

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 I.粘菌変形体の原形質流動の特性
 真性粘菌の一種Physarum polycephalumの変形体は巨大な原形質の塊で,外側がゲル状の,内側はゾル状の原形質からなっている。ゲルの外側には通常の顕微鏡では見えないが,スライムと呼ばれる多糖類のかなり厚い層がある。この層は変形体の移動とともに,後に捨てられていく。
 変形体の原形質流動はいわゆる往復原形質流動と呼ばれる型の原形質流動である1)。顕微鏡の下でゾルの流動を観察していると,流動は徐々に速くなり,もっとも速い時には1mm/秒程度にも達する。動植物細胞で認められる原形質流動の速度は通常数μm/秒であるから,変形体の原形質流動の速度は非常に速い。また車軸藻の回転型原形質流動のゾル-ゲル界面でのずれの速度,数十μm/秒,横紋筋のアクチン線維とミオシン線維の間の滑り速度,数十μm/秒よりもはるかに大きく,変形体の原形質流動が,車軸藻のようにゾル-ゲル界面でのアクチン,ミオシンのすべり運動によって起こるのではないことを示している。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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