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特集 肺の微細構造と機能
肺上皮細胞の微細構造と病理
著者: 安田寛基1
所属機関: 1帝京大学医学部第二病理学教室
ページ範囲:P.167 - P.177
文献購入ページに移動 肺は呼吸を営むので,当然のことながら大気と対応する肺胞上皮細胞との接触面は他の臓器と異なって気相と固相との界面を形成する。この境界面を保つために肺胞活性物質が肺胞壁表面に存在する。他方,肺は循環の面でも際立った特徴があり,独自の低圧系に支えられて呼吸を有利に導くためのきわめて菲薄な上皮細胞と毛細血管関係,いわゆる血液空気関門(Blood-air barrier)を形成している。電子顕微鏡形態学では,一般に微細構造をよりよく保存するために,可及的速やかな生体組織の採取,固定,包埋が要請されるので,動物実験材料かあるいはいわゆる生検材料による観察が主体であるが,たとえば肺の生検材料は,腎の糸球体などのような明瞭な機能単位がないので,生検の目的は肺癌などの診断が主である。このため,非腫瘍性疾患の超微形態などは見過されがちであった。私どもの教室では,この点に留意し,従来より死後時間の短い病理解剖例の肺疾患について電顕的観察を行ってきた。検索を進めながら気が付いたことは,肺組織は死後変性が少なく,したがって比較的保存の良好な電顕標本が得られることであった。今回の検索はこれらの非腫瘍性疾患の中の興味ある疾患を選んだ。
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