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文献詳細

雑誌文献

生体の科学39巻3号

1988年06月発行

文献概要

特集 肺の微細構造と機能

肺の内分泌・代謝機能

著者: 北村諭1

所属機関: 1自治医科大学呼吸器内科学教室

ページ範囲:P.231 - P.234

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 肺はガス交換を行う臓器であり,呼吸運動により肺から酸素を取り込み,炭酸ガスを放出する。1分間に平均16回呼吸するとして計算すると1日で約23,000回も呼吸することになる。このようにして外界から空気を取り込むため,種々の外来異物や病原微生物を吸入する結果となり,消化管とならんで種々の異物反応や感染症をきたしやすい。したがって,通常,肺には強力な生体防御機構が備わっており,これらの外来異物や病原微生物を排除する。肺にはこれらの働き以外にも,生理活性物質の作用を変化させる機能があるとする画期的な研究成果は,Starlingら1)によりすでに1920年代に発表された。当時彼らは瀉血された血液中にはある種の毒性物質があり,それが肺血管系を通すことにより解毒されると考えた。その後25年を経てGaddumら2)がこれを追試し,その解毒作用は血液中に含有されているセロトニンの不活性化であることを証明した。
 肝臓が種々の薬物を分解して解毒作用を発揮するように,肺はセロトニン,ブラディキニン,プロスタグランジンE2(PGE2),PGF2α,ロイコトリエンC4(LTC4),LTD4などの血管作動性物質を代謝する。したがって,近年,肺はガス交換臓器であると同時に一種の代謝臓器であると考えられるようになった3)。一方,肺はPGE2,PGF2α,PGI2などを産生し肺循環系へ放出するところから,内分泌機能も併有するものと考えられる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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