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実験講座
肺胞の組織細胞化学的検索法
著者: 森井外吉1 鶴原敬三1 小谷演俊1
所属機関: 1関西医科大学病理学教室
ページ範囲:P.247 - P.252
文献購入ページに移動肺胞は,気腔を取り囲む薄い壁の終末嚢で,その壁内を流れる細血管内血液と気腔に出入する空気との間でガス交換を可能にする界面を提供している。肺胞の病態生理を検討する際,この界面を構成する局所(細血管内皮,肺胞間質,肺胞上皮,肺胞食細胞,肺胞被覆層など)を生体内にあるがままの状態で採取保存して形態学的観察の対象にすることが重要である。とくに,局在物質をin situに化学的同定をする組織細胞化学的検索法では,気腔という—外力によって変形しやすい,また主に蛋白凝固に依存している組織固定という考えにもなじまない—ところを含む肺胞組織の生体内からの採取は十分に慎重に試み,その固定・切片作製過程にも物理ないし化学的変質にいろいろと配慮しなければならない。要するに,開胸すれば肺は陽圧により退縮し,そのために気腔は変形し肺胞内細血管はつぶれる。また,未固定の場合はもちろん,固定されていても肺胞腔内に介在する物質は物理的に流出しやすい。それらをできるだけ防ぐために,次の手技が工夫されている。なお,新鮮な肺胞内介在物を採取し,ただちに細胞化学的観察を試みることもある。
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