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特集 細胞測定法マニュアル 細胞運動測定法
原形質流動 車軸藻類アクチン線維を用いたミオシン運動の解析
著者: 新免輝男1 河野匡1
所属機関: 1東京大学理学部植物学教室
ページ範囲:P.502 - P.503
文献購入ページに移動 アクトミオシン系による運動の分子機構としてはアクチンとミナシン間の滑り説が確立している。最近,植物細胞における原形質流動もアクトミオシン系によることが明らかとなりつつある。原形質流動の機構は車軸藻類においてもっとも研究が進んでいる。車軸藻類は湖や沼などに生える淡水産の藻である。実験に用いられる節間細胞は直径1mm,長さ十数cmにも達する円柱形の巨大細胞である。その利点を生かして,切断,くくり,灌流などの細胞手術を施すことができる。細胞の最外層はセルロースより成る細胞壁であり,その内側に原形質膜がある(図1)。細胞内は液胞膜によって原形質と液胞に分けられ,液胞が全細胞体積の90%以上を占める。原形質膜の内側にはゲル状の原形質外質に固定した一層の葉緑体がある。その内側のゾル状の原形質内質が活発に流動している(原形質流動)。葉緑体の内表面にアクチン線維の束が極性をそろえて配列している。ミオシンは原形質内質中の細胞器官に結合していると考えられている。すなわち,原形質流動の流動力は「固定したアクチン線維の上を細胞器官に結合したミオシンが滑る」ことにより発生する1)。動植物界を通じて車軸藻類のアクチン線維ほど配向のそろったものは他にない。また原形質流動の速度はアクチンとミオシンの滑りそのものを反映している。
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