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文献詳細

雑誌文献

生体の科学39巻6号

1988年12月発行

文献概要

特集 細胞内における蛋白質局在化機構

小胞輸送に関与する遺伝子

著者: 笠原道弘1

所属機関: 1帝京大学医学部物理学教室

ページ範囲:P.584 - P.587

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 ゴルジ体,リソゾーム,細胞膜に存在するタンパク質および分泌タンパク質は少数の例外を除き小胞体からそれぞれの場所に所定の経路を通り小胞輸送によって運ばれる1)。小胞輸送はこれらタンパク質の日的とする場所への運搬をになっているだけでなく,真核細胞の他の機能もになっている。分泌あるいはエキソサイトーシスは上記タンパク質運搬のうち細胞外に放出されるものについて強調したと理解できる2)。エンドサイトーシスも小胞輸送がその細胞内でのメカニズムである3)。神経細胞における軸索輸送も代謝に伴う構成性の物質輸送で,そのうち速い輸送は小胞輸送である4)。さらに,細胞膜機能調節のいくつかのものがこの小胞輸送と密接に関係していることが明らかとなってきた5)。細胞膜の各種リセプターの内在下(internalization),リサイクリングあるいは細胞膜機能タンパク質(とりわけ膜輸送に関与するタンパク質)が細胞内情報伝達系のトリガーにより細胞内小胞から細胞膜に膜融合により移動し活性の上昇をもたらすことが見出された。これらの可逆的な輸送を含め,小胞輸送は真核細胞の細胞活動のさまざまな局面で重要な役割をはたしていることがわかった。小胞輸送という複維な現象を研究するためには形態学,生理学,生化学,免疫学,遺伝学などあらゆる知識と手法を動員する総合的アプローチが必須となっている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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