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文献詳細

雑誌文献

生体の科学39巻6号

1988年12月発行

解説

乱された感覚系と乗物・宇宙酔いそして順応と再順応

著者: 安井湘三1

所属機関: 1九州工業大学情報工学部

ページ範囲:P.598 - P.607

文献概要

 さまざまな感覚受容器からの情報は脳で系統的に整理され,この総合的判断の下にわれわれは自己と周囲の空間相対関係を認識しているに違いない。物理環境が不自然であると,この機構に問題が生じ知覚の混乱は行動に支障を来すだけでなく生理的不快感も引き起こす。しかし,このような状況にも生体は順応していくのも事実である。無重力下で得られた最新の知見も含めて,この分野の研究を視覚と前庭感覚の関連で展望しながら,知覚神経系を主として随伴放電説,脳内モデル説,そして感覚矛盾説の観点から考える。
 自己と外界の正しい認識はすべての生き物にとって重大な課題である。高等動物の感覚・知覚系は外界入力の種類別に専門化している。こうすることにより,より精緻な周囲情報に基づいた命令を運動系に下すことが可能と思われる。一方,感覚刺激はその種類ごとに時を違えて一つ一つ入ってくるよりは複数が同時進行である場合が普通である。その際,脳は各感覚系の特性を考慮して,ある時は選択的に,また時には総合的にバランスして周囲との関係を判断しているはずである。この機構は通常うまく働いている。たとえばわれわれの頭が動くとき,視界に入る景色が変るのが見えるが,視覚だけでなく内耳の前庭器官からも神経パルスが脳に送り込まれる。また,自分の意志によるものであれば「頭を動かせ」という脳が発した命令自体も情報となる。こうして動いたのは周囲ではなく自分と弁別される。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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