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文献詳細

雑誌文献

生体の科学4巻1号

1952年08月発行

文献概要

展望

ATP

著者: 吉川春壽1

所属機関: 1東京大學醫學部生化學教室

ページ範囲:P.2 - P.8

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 1.ATP.ADP.AMP
 ATPはアデノシン三燐酸Adenosine triphosphateの頭文字三つをとつた略語で,この物質はアデニン,リボーゼ各1分子,及び3分子の燐酸から成るところの一種のヌクレオチードである。
 ATPの端の燐酸1個のはずれものがアデノシン二燐酸Adenosin diphosphate.で,略してADP.という。さらにもう1個燐酸のはずれたものが昔から知られていた。アデニール酸Adenylic acidであつてアデノシンー燐酸に他ならないのであるからAdenosile monophosphateの頭文字をとつてAMPと略稱するのが普通である。ATPはアデニール酸とピロ燐酸との化合物でもあるのでアデニールピロ燐酸Adenyl pyrophosphateともいう。新鮮な筋肉の浸出液の中から分離されたアデニール酸はアデニン-9'β-D-リボフラノシドのアデノシンのモノ燐酸エステルで,燐酸の結合位置はリボーゼの5の炭素の位置にある,アデノシン-5'燐酸である。これを筋肉アデニール酸と稱している。これは酵母から得られた酵母核酸の加水分解で得られたアデノシン-3'-燐酸と區別するためである。アデノシン-3'燐酸は筋肉アデニール酸とちがつて,生物學的活性はない。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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