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文献詳細

雑誌文献

生体の科学4巻3号

1952年12月発行

文献概要

展望

腦質化學について

著者: 中脩三1

所属機関: 1九州大學醫學部腦神經科教室

ページ範囲:P.106 - P.112

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 はしがき
 生理學では專ら神經の刺戟傳導の過程が研究の對象となり,活動電流の動きの議論に終始している。しかしそれが神經活動の総てであろうか。神經細胞,グリア細胞,或は灰白質の基地を構成する物質の新陳代謝,又は所謂白質と云う有髄神經の集りに特有な物質代謝等がより重大なのではあるまいか。私は筋肉と神經細胞は元々一つの細胞であり,それが全身の發育に從つて遠く離れたもので,神經はそれをつなぐ電線に過ぎない。最も大切なのは發電所(神經細胞)とモーター(筋肉)であり,その間の電線だけの研究は仲々むずかしいものではないかと考える。幸いモーターの方はEmbden, Meyerhof, Lohmann, Cori等の努力により益々明らかとなり,色々の酵素系が發見せられて,生體エネルギー轉換に偉大な知識を與えているが,最も根本問題と考えられる發電所の方はさつぱり振わないと云つてよい。Nachmannsohn1)一派は最近神經興奮傳導と筋肉のそれは同じ現象であり,シビレエイや槍イカの神經節に高性能のCholinesteraseやCholinacetylaseを證明して,神經細胞の表面に於けるacetylcholineの分解合成によつて神經の活動電流を説明しようと試みた。しかしそれもacetylcholinの研究から神經細胞の新陳代謝にまで溯つたものであり,初めから神經細胞の新陳代謝を研究對象としたものではない。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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