報告
膀胱の吸收について
著者:
柴田勝博1
小川榮一1
吉村不二夫2
根本萬次2
所属機関:
1群馬大學醫學部藥理學教室
2群馬大學醫學部解剖學教室
ページ範囲:P.235 - P.237
文献購入ページに移動
膀胱や尿管の上皮細胞には吸收または分泌の機能があると想像され,尿成分やそれ以外の物質を膀胱内に注入してこれを検査した報告は多數あるが未だ定説はない。即ち正路1)等は正常尿成分である水,食鹽,尿素の吸收を認めているが,Cohnheim2)その他はこれに反對している。又Conradt3)は水,食鹽は吸收されず,尿素は吸收されると述べている。このほかの尿成分や色素,藥物等についても,その吸收についてまちまちの報告がある。これ等の實驗は化學的方法または生物學的検定法によつて,定性的または定量的に行われたものであつて,細胞學的立場から,このような物質の膀胱上皮を通過する組織像については全く報告されていない。化學的または生物學的検定法による成績が一致しない理由の一つは方法論的不備が考えられる。即ちある物質の吸收を觀察する場合,一定量の物質を膀胱内に入れて,一定時間後にその増減をしらべ,減少しなければ吸收がないという定量法では,膀胱内外の物質の出入りをみのがすことがある。この點は放射性同位元素で目印をつけた物質を使うことによつて改善される。Johnson等(4)はH2O18及びD2Oを使つて膀胱内外の水の轉換率をしらべ,毎分0.4%であると述べている。私達はP32を使つて,膀胱の吸收をしらべ,又墨や脂肪が吸收されて血管に入る過程を形態學的に證明し得たのでこゝに報告する。