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文献詳細

雑誌文献

生体の科学40巻1号

1989年02月発行

文献概要

特集 分子進化

カルシウム結合蛋白質の進化

著者: 戸田弘子1 近藤淑2 八木康一3

所属機関: 1大阪大学蛋白質研究所化学構造部門 2相模中央化学研究所 3北海道大学理学部化学第二学科

ページ範囲:P.24 - P.31

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 生物に見出されるカルシウム結合蛋白質には,いくつかのタイプがある。一つは,酵素活性の発現に強固に結合したカルシウムを必要とする金属酵素,たとえば種々の起源のアミラーゼである。もう一つは,細胞外で行われる血液凝固や細胞接着に関係のあるカルシウム結合蛋白質で,γカルボキシグルタミン酸を含んでおり,プロトロンビンなどが知られている。カセインやカルセクエストリンのように,多数のカルシウムイオン(Ca2+)を結合するカルシウム貯蔵蛋白質といえるものもある。
 そのほか,細胞内にはCa2+情報伝達に働いている一群のカルシウム結合蛋白質がある。20年前に,Ca2+がシグナルの働きをしているとはっきりわかっていたのは,横紋筋収縮だけであった1)。筋肉以外の細胞にまでこの考えを拡張しようと最初に主張したのはR.H.Kretsingerである。彼は,パルブアルブミンの結晶構造に基づいて,細胞内にあるカルシウム結合蛋白質の性質を次のように規定した2)。1)細胞内でカルシウムシグナルの仲介を行う。2)数mMのマグネシウムイオンをふくむ細胞質中で,Ca2+にたいする結合の解離定数はμMレベルである。3)EFハンド構造をもつ(EFハンド構造についてはあとで説明する)。その後,Ca2+を強く結合する蛋白質が多数見出されたが,その大半はパルブアルブミンと相同の一次構造を持つEFハンド型の蛋白質であった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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