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文献詳細

雑誌文献

生体の科学40巻2号

1989年04月発行

特集 大脳/神経科学からのアプローチ

大脳ニューロンによる視覚情報の統合機能

著者: 田中啓治1

所属機関: 1理化学研究所思考機能研究グループ

ページ範囲:P.115 - P.120

文献概要

 大脳皮質視覚領域の機能的構造に対するわれわれの理解は,この15年の間に主にサルを実験動物に用いた研究によって大きく進んだ1,2)。大脳皮質視覚関連領域は20余りの異なった領野に分けられ,領野間の結合を解剖学的に調べた研究者たちは,第一次視覚野(17野,Ⅴ1野)に始まる樹状構造(木の枝が段々に枝分かれする様子を指す)をしたモデルを提案した(図1)。
 枝分かれの解剖学的構造に想定される機能は,情報の分類である。網膜で受け取る視覚情報は,物の形,色,テクスチァー(表面の細かい模様),動きなどたくさんの要素に分解することができる。個々の神経細胞の光刺激に対する応答を調べる研究により,第一次視覚野では混在していたこれらの情報が,第一次視覚野からの枝分かれの出力構造により,大脳皮質の中の異なった部分に分類して配られる様子が示された。第一次視覚野の次のステージであるⅤ2野では,線分の傾きに選択的に応答する細胞が集まる領域,刺激の色に選択的に応答する細胞が集まる領域,刺激の動きの方向に選択的に応答する細胞が集まる領域,以上3種類の領域が帯状の構造をして繰り返し現れる。またMT野には動きの方向に選択的に応答する細胞だけが集まり,Ⅴ4野には線分の傾きに選択的に応答する細胞と色に選択的に応答する細胞だけが集まる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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