特集 細胞骨格異常
細胞骨格アクチンmRNAの構造とその発現
著者:
崎山樹1
徳永克男1
所属機関:
1千葉県がんセンター研究局生化学研究部
ページ範囲:P.162 - P.166
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高等動物のアクチンは,少なくとも6つの異なる遺伝子にコードされ,蛋白質のレベルでは等電点の差で,α,β,γの3種に分けることができる1-3)。すなわち,骨格筋α,心筋α,平滑筋α,γ,非筋肉細胞β,γ(細胞質アクチンとも呼ぶ)である。各アクチンのアミノ酸配列は種を越えてよく保存されており,筋肉型と非筋肉型の間でも375個のアミノ酸のうちその違いは25個にとどまっている。細胞質アクチンはmicrofilamentの主成分をなし数多くのactin-binding proteinsとの協調作用で細胞の分裂,運動,増殖,分泌,形態維持などに重要な働きをしている4)。細胞質β,γアクチン間ではN末端側のわずか4個のアミノ酸の置換があるのみであるが2,3),両者の機能上の性質の異同については判っていない。
両アクチンの発現は細胞により異なり,マウス線維芽細胞Lにおけるγアクチンの抑制をはじめとし5,6),白血病細胞では分化の誘導によりβ/γ比が変動する場合も見られる7)。また,がん細胞では細胞質アクチンの様様な変異体の存在が報告され8,9),これらは癌の形質と強い関わりを持っていることが示唆されている。