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文献詳細

雑誌文献

生体の科学40巻4号

1989年08月発行

文献概要

特集 研究室で役に立つ新しい試薬 糖関連化学物質(試薬) レクチン

レクチン(総論)

著者: 辻勉1 大沢利昭1

所属機関: 1東京大学薬学部生体異物・免疫化学教室

ページ範囲:P.486 - P.491

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 レクチンとは,特定の糖構造に結合する活性を有する蛋白質の総称である。歴史的には,ある種の植物種子抽出液に赤血球を凝集する物質が発見されたことが発端となっており,その後,数多くの凝集素が植物,動物,微生物に広範囲に分布していることが報告された。また,これらの多くが赤血球表面の糖を認識し結合していることが判明し,レクチンという名称が与えられている。生物体における機能は,ほとんどのレクチンについて未だ解明されていないが,生物科学の様々な分野で研究用試薬として広範に利用されている。試薬としての観点からみると,1)結合特異性が比較的よく解明されている,2)安定性,3)入手の容易さなどの理由で,植物および無脊椎動物由来のものが多く使用されている。
 一般にレクチンは,非共有結合により結合した複数のサブユニットで構成される多量体構造をとるため,1分子のレクチンに糖の結合部位が複数あり,細胞を架橋し凝集させる活性を有していたり,多糖類や糖蛋白質と沈降反応を起こしたりする。多くのレクチンは,特定の単糖によって結合の阻害を受ける(この単糖のことをしばしばハプテン糖と呼ぶ)。たとえば,代表的なレクチンであるコンカナバリンA(Con A)やレンチルレクチンなどのレクチンは,D-マンノースによってもっともよく,また,より高い濃度のD-グルコースによっても結合が阻害される。いずれの糖の場合もαアノマーの方がβアノマーより阻害活性が高い。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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