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文献詳細

雑誌文献

生体の科学40巻5号

1989年10月発行

文献概要

特集 核内蛋白質

染色体凝縮因子

著者: 西本毅治1

所属機関: 1九州大学医学系研究科細胞工学講座

ページ範囲:P.555 - P.559

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 真核生物の細胞がM期にはいる時には,染色体凝縮因子(maturation promoting factor:MPF)の働きによりDNA分子は約10000分の一に小さく折り畳まれて染色体を形成し,核膜が崩壊して紡錘体が出現する。核と細胞質におけるこれらの変化はすべて可逆的であり細胞分裂の終了とともに新たに核が形成され,G1期が始まる。このように大きな細胞構造の変化が起こるM期は,古くから生物学の主要な研究対象である。細胞周期進行の調節という観点からもM期開始の調節はもっとも関心のあるところである。なぜならDNA複製の途中に細胞分裂が起こると均等な遺伝子の分配はもとより細胞の生存そのものが不可能になる。それゆえ,M期開始,つまり染色体凝縮の開始の調節は真核生物の持っている基本的な生命維持の機構の一つと思われる。
 染色体凝縮因子は一般に次の観点より研究が進められている。(1)変異株を用いた遺伝的解析。酵母やカビ,培養動物細胞などから染色体凝縮に変異をもつ細胞周期温度感受性変異株が分離されている。(2)染色体が凝縮する時には多くの蛋白質がリン酸化されるが,生化学的にM期に最大の活性を持つprotein kinascを検索する方法。(3)実際に染色体凝縮を引き起こす因子を検出する。染色体凝縮に関わる因子(これらはすべて核膜および核質にある核蛋白質である)の研究は現在のホットな話題であり毎月どれかの雑誌に報告が載っている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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