特集 ギャップ結合
ギャップ結合の細胞化学
著者:
藤本和1
酒井眞弘1
小川和朗1
所属機関:
1京都大学医学部解剖学教室
ページ範囲:P.645 - P.649
文献購入ページに移動
細胞化学とは,細胞および細胞下の微細構造cellularand subcellular structureレベルでの局所生化学topochemistryである。換言すれば,細胞内小器官の構造に即し,その生理学的機能ならびに生化学的特性を検討する方法である。したがって,ギャップ結合のように特異な構造をもつ細胞内小器官の微細構造と機能を検討する上において,細胞化学的アプローチは有用であると考えられる。現在までのところ,以下に挙げるように,ギャップ結合の機能を反映していると考えられる種々の細胞化学的な特性が明らかになってきた。1)ギャップ結合はcAMPあるいはCa2+代謝に関与する数種類の酵素活性を有する,2)チャネルが開いた状態にある親水性チャネルを細胞化学的に検出することは可能であり,その分布状態はCaイオンによって変化する,3)ギャップ結合の細胞質側は陰性に荷電している,4)ギャップ結合にはカルモジュリン結合部位が存在することである。また,近年,われわれは細胞化学的標識を施したギャップ結合試料を極低温電子顕微鏡(cryo電顕)で観察することによって,電子線損傷のない状態で細胞化学的標識の局在を巨分子レベルで検索している。本稿では,先に挙げたギャップ結合の細胞化学的な特性を概説するとともに,Cryo電顕観察によるギャップ結合の高次構造と細胞化学に関する最近の知見を紹介する。