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文献詳細

雑誌文献

生体の科学40巻6号

1989年12月発行

文献概要

解説

精神と脳の接点

著者: 岸本英爾1 松下正明1

所属機関: 1横浜市立大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.676 - P.687

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 単細胞生物がこの地球と言う青い星に誕生してより,現在は30数億年たつとされている。この単細胞生物が地球に誕生してより,脳のある生物,すなわち脊椎動物の出現までに25億年の年月を要している。このような生物の進化史を見ると脳と言うものが地球上に出現すること自体,いかに大変な出来事であったかがうかがえる。
 脳の進化の研究の最近の成果によれば,今から5億年以上前のカンブリア紀にホヤの幼生に似た原始脊索動物が地球上に出現したとしている。この最初の脳の出現からヒトへと進化することになった原始的真猿への脳の発達までに約4億7000万年の月日を要している。プロコンスルと名付けられているドリオピテクス亜目の原始的真猿(図1参照)はアフリカの熱帯林に出現し,現在の人類の元をなしたとされるが29),ケニアのツルカナ湖の近くで発見されたその脳の体積は約300mlであり,その体重は45kgと見積もられている。この最初の人類の出現より現在まで約3000万年経過しているが,この間に人類の脳は約4倍にその体積を飛躍的に増加させた。そのもっとも体積を増やしている脳の部分は連合野と言われる脳野であると言われている(図2参照)12)。この間に人類は社会を構成し,道具,火を使い,言語,文字を獲得して文明を確立して行った。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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