icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

生体の科学41巻1号

1990年02月発行

雑誌目次

特集 発がんのメカニズム/最近の知見

がん遺伝子産物の多様性

著者: 藤田道也

ページ範囲:P.2 - P.8

 「生体の科学」編集室では今回の特集へのイントロダクションをかねて本稿を用意した。世上でがん遺伝子と呼ばれるものは急速にふえつつある。がん遺伝子oncogeneは本来レトロウイルスのそれ(ウイルス性がん遺伝子viral oncogene,v-onc)として見出された。それをプローブとして宿主細胞のゲノムに見出されたのが細胞性がん遺伝子cellular oncogene(protooncogene,c-onc)である。今ではv-oncはc-oncに由来したと信じられている。また,既知のプローブを用いることにより,対応するv-oncをもたないc-oncも見出され,それらの中にはこれまでがん化には関係がないと思われていた正常タンパクをコードする遺伝子が含まれることが分かってきた。
 がん遺伝子がコードする蛋白は多様である。成長因子とその受容体,ホルモン受容体,G蛋白質,細胞質および核内のホルモン受容体,細胞質キナーゼ,転写因子(エンハンサー結合蛋白)など,機能も細胞内局在もさまざまである。ここでは,参照するのに便利なように,がん遺伝子とその予備軍をアルファベット順にリストアップすることにする。このために,参考文献1-6)にあげたような総説や単行本さらにオンライン検索結果を参照した。また,個々のがん遺伝子について簡単な説明をつけたが,それらについて個々に文献をあげることはしなかった。

化学発がんのメカニズム

著者: 牛島俊和 ,   長尾美奈子

ページ範囲:P.9 - P.15

 化学発がんには,発がん機構を解析するためのモデルとしての意味と,ヒトの発がん物質を検索するという意味とがある。従来,前者は化学物質が遺伝子へ及ぼす変化を中心に研究され,後者は化学物質への暴露群と非暴露群との比較対照という主に疫学的な手法を用いて研究されてきた。最近の研究により,体内での薬物動態,DNA分子と化学物質の相互作用,DNA付加体生成,その修復機構などの解析を通して,この二つの研究の間のギャップはかなり埋ってきた。また,発がんの,どのステップで,どの細胞の,どの遺伝子が変化を受けるかということもかなり判明してきている。
 本稿では,おもにマウスの皮膚化学発がんから形成された多段階発がんのモデルについて解説し,その後,いくつかの実験系でのがん関連遺伝子と化学物質の関連について述べてみたい。

チロシンキナーゼ:シグナル伝達とがん

著者: 山本雅

ページ範囲:P.16 - P.20

 細胞は,外界からの様々な情報を的確に識別しながら増殖・分化し,機能している。外来情報としては,まずホルモン,神経伝達物質・増殖因子などがあげられる。増殖因子は,細胞の増殖を促進する一方で,ある場合には増殖を抑制することもある。また細胞の分化を促すような機能を有する因子も数多く知られている。さらに,細胞同士が互いを外来情報として認識することにより,それぞれの増殖を制御しあい,無秩序に増えることがないような仕組みも働いている。リンパ球や白血球では抗原を認識して抗体産生を行うようになったり,リンフォカインの産生を始めたり,細胞障害活性を示すようになったりする。多くの場合,外来情報は,細胞膜表面で捉えられ,様々なしくみで処理される。
 この10年程の間に,情報伝達過程が種々の系で詳しく解析され,相異なる種類の情報伝達系で,いくつかの共通の因子が機能していることが明らかになってきた。すなわち,チロシン残基特異的蛋白質リン酸化酵素(チロシンキナーゼ),フォスファチジルイノシトールリン酸化酵素(PIキナーゼ),G蛋白質,C-キナーゼ,Ca2+等等の関与である。とくに,外来情報の受容伝達反応の第一段階において,チロシンキナーゼが重要な働きをしていることが数多くのデータによって示されてきている。

GTP結合蛋白質と細胞がん化

著者: 佐藤孝哉 ,   上代淑人

ページ範囲:P.21 - P.25

 I.GTP結合蛋白質を介するシグナル伝達
 多くのホルモン,神経伝達物質などは,細胞表面に存在する特異的なレセプターに結合し,その作用を細胞内に伝達している。その一つの様式として,アドレナージックレセプター-アデニル酸シクラーゼ系やロドプシン-cGMPフォスフォジェステラーゼ系などにおいては,G蛋白質を介するシグナル伝達系がよく研究されている(図1)1)。最近では,リン脂質代謝系やイオンチャネル系などにおいても,G蛋白質の関与を示唆するデータが数多く報告されている。一方では,蛋白質の精製,あるいはcDNAのクローニングにより,多数の構造の類似したG蛋白質の存在が明らかにされている。これらの遺伝子は一つの遺伝子群を形成していると考えられていて,おのおのが細胞内シグナルのトランスデューサーとして機能していると予想される(表1)2)
 G蛋白質は,α,β,γから成る三量体構造をとっており,このうちαサブユニットがGDP,GTPを特異的に結合している。GDPを結合した不活性型のG蛋白質は,レセプターからの刺激によって,GDP-GTP交換反応が促進され,GTPを結合した活性型へと変換される。これが下流のエフェクター分子と特異的に相互作用してシグナルを伝える一方,自らのGTPase活性により,結合しているGTPをGDPと無機リン酸に加水分解して,再び不活性型に戻る。

ras遺伝子産物P21の機能調節とGAP(GTPase Activating Protein)

著者: 服部成介

ページ範囲:P.26 - P.28

 I.GAPによるras遺伝子産物p21のGTPアーゼ活性促進
 ras遺伝子産物P21はGTP結合性タンパク質であり,GTP加水分解活性によりシグナル伝達を制御すると考えられている。大腸菌で産生したp21をGDPまたはGTPの非加水分解性のアナログと複合体を形成させ細胞に微量注入した場合,GTP結合型のみが生物学的に活性であるからである1,2)(図1)。したがってp21の機能はP21発現量およびGTP結合型とGDP結合型の量比により調節される。ras遺伝子の活性化として多くのがん組織で示された12番目および61番目のアミノ酸置換はいずれもGTPアーゼ活性を低下させるものであり,その結果活性型であるGTP結合型の割合を増やし,p21の生物学的活性を増加させるものである3)。さらに1987年にTraheyとMcCormickはP21のGTPアーゼ活性を著しく促進する因子としてGAP(GTP ase Activating Protein)を報告した1)。彼らはP21・〔α-32P〕GTPをアフリカツメガエルの卵母細胞に注入した際にGTP加水分解が試験管内よりはるかに速く起こることを見出し,さらにこの現象が卵母細胞抽出液の可溶性画分を用いても見られることを示した。

シグナル伝達と発がん―MAPsとMAPキナーゼ

著者: 星美奈子 ,   西田栄介

ページ範囲:P.29 - P.32

 微小管は細胞分裂期には紡錘体を,分裂間期には核近傍の中心体から細胞膜に向かって放射状のネットワークを形成している。微小管の機能としては,細胞分裂における染色体移動における役割がある。細胞運動ならびに細胞の形態形成における微小管の働きも解明されつつある。近年,細胞内微小管ネットワークが増殖シグナル伝達にも関与していることが示唆されている。静止期の細胞は,通常血清あるいは細胞増殖因子の刺激があって初めて増殖を開始するが,微小管脱重合剤であるコルヒチンを細胞に添加し細胞内微小管ネットワークを脱重合させるだけでも,細胞はS期に移行しDNA合成を開始する1,2)。微小管脱重合によって増殖因子として働く物質が培養液中に放出されるわけではない2)ので,増殖因子によるシグナル伝達経路の途中の段階が細胞質微小管の脱重合によって引き起こされ,そこから通常の伝達経路に合流しDNA合成にいたると筆者らは考えている3)
 発がん機構は正常細胞の増殖機構と密接に関係しており,正常細胞における増殖シグナル伝達機構の解明は,発がん機構の解明の鍵となろう。正常細胞の増殖は各種増殖因子によって制御されているが,増殖因子受容体が,がんウイルスのがん遺伝子産物と同じくチロシンキナーゼ活性を有すること4)は,発がん機構においてだけでなく,正常細胞の増殖シグナル伝達機構においてチロシンキナーゼ活性が重要であることを示唆している。

転写制御因子と発がん

著者: 中越英樹 ,   石井俊輔

ページ範囲:P.33 - P.36

 レトロウイルスのもつがん遺伝子との相同性から,これまでに数多くの細胞性がん遺伝子(proto-oncogene)が見出されてきた。これらプロトオンコジーン産物の機能については不明な点も多いが,細胞の増殖や分化に密接に関与していることが次第に明らかにされつつある。なかでも,その遺伝子産物が核内に局在する一連のがん遺伝子群(核内がん遺伝子)は,遺伝子発現調節に関与していることが予想されていたが,最近,発がんプロモーターTPAにより誘導される転写活性化因子AP-1(activator protein-1)がプロトオンコジーンc-junの産物そのものであることが明らかとなり,転写制御因子と細胞がん化との関連性が示唆された。
 本稿では,核内がん遺伝子のうち,転写制御因子としての機能が明らかにされてきたc-jun,c-fos,c-mybについて細胞がん化との関連性を考察する。

染色体異常と発がん―転座によるがん遺伝子の活性化

著者: 福原資郎 ,   大野仁嗣

ページ範囲:P.37 - P.40

 一般に,腫瘍クローンにみられる染色体の構造異常は,核型進化の面より初発変異とこれに付随する続発変異に分けられる。リンパ系腫瘍には,未分化型腫瘍と分化型腫瘍に大別すると対照的に異なる初発変異を認める1)。分化型腫瘍は,リンパ球の分化に伴って発現する機能遺伝子(TCR:T細胞受容体遺伝子,Ig:免疫グロブリン遺伝子)の座位に関連した構造異常が好発する。すなわち,T細胞側腫瘍では,7q34-36(TCR-β)転座や7p15(TCR-γ)が見られるようになり,もっとも分化したATLや末梢性Tリンパ腫-白血病では,14q11(TCR-α)切断異常が好発する。最近,14q11に座位するTCR-α遺伝子内にはTCR-δの遺伝子座位のあることが証明された。分化型B細胞腫瘍では14q32(IgH)転座が好発する。これらの染色体転座は,それぞれに位置するリンパ球固有の機能遺伝子とがん関連遺伝子との結合を誘発することによりがん関連遺伝子を活性化する造腫瘍性初発変異と考えられる。
 こうした分子細胞遺伝学の進歩に先立つ1978年以来2),われわれは14q32転座を初発変異とし,発がん機転を共有する腫瘍群として要約される14q32転座型腫瘍(14q+マーカー陽性腫瘍)の概念を提唱してきた(図1)3)

染色体異常と発がん―欠失とがん抑制遺伝子

著者: 占部和敬 ,   笹月健彦

ページ範囲:P.41 - P.46

 1969年Harrisら1)は,エーリッヒ腫瘍細胞などのマウスの悪性腹水腫瘍細胞とマウス線維芽細胞A9細胞との融合実験から,“A9細胞は,腫瘍細胞の悪性形質を抑制する何かを融合細胞に寄与している。この寄与は融合細胞からある染色体が脱落すると失われる”と結論し,正常細胞ではがん化を抑えている遺伝子,いわゆるがん抑制遺伝子が存在することを示唆した。しかし染色体の欠失,およびその機能欠失ががん化に関与するという考えを支持する研究は,思ったほど進まなかった。その理由としては,1970年代後半よりプロトオンコジーンが続々と発見され,その活性化プロトオンコジーンの研究が急激に進み脚光を浴びていたこと,さらには活性化プロトオンコジーンは,優性に働き,正常細胞に導入すると悪性形質を獲得するのでその検出がわりと簡単にできたが,対照的に,がん化に際して排除される遺伝子の検出ははるかに困難であったことがあげられる。様々ながんにおいて,染色体が欠失していることが染色体分析によって明らかになっていたが(表1),近年の分子生物学の目ざましい発展により,網膜芽細胞腫の第13染色体q14の欠失部位に存在する遺伝子,RB1遺伝子がクローニングされた。この成功によって,腫瘍特異的欠失部位の同定とそこに局在するがん抑制遺伝子のクローニングに目が向けられるようになった。本稿では,RFLP解析による染色体欠失部位とがん抑制遺伝子研究について概説してみたい。

細胞質と発がん―発がんおよび細胞分化における細胞質因子の役割

著者: 岩倉洋一郎 ,   平野哲男

ページ範囲:P.47 - P.50

 生物個体を構成する多種多様の細胞の増殖をコントロールし,組織特異的な遺伝子発現を行わせることは,生物の生存にとって必須のことである。ところが,時々このような制御を逸脱し,異常な挙動を示す細胞が現れ,個体の生存を脅かす場合がある。これががん細胞と呼ばれる。がん細胞の特質は本来その細胞が個体の中にあって従うべき時間的・空間的制約から逸脱して増殖することであり,細胞増殖の異常と同時に分化形質の発現異常を伴うことが多い。このことは,必ずしも細胞自身の異常を意味せず,たとえば正常な胚でも子宮以外の場所に移植すれば容易にがん増殖し1),逆に初期胚由来の胚性癌腫(Embryonal carcinoma:EC)細胞でも正常な初期胚に戻してやれば立派に個体の一部を形成する2)ことはよく知られた事実である。したがって細胞のがん化を理解するうえで,複製装置自身の異常による無限増殖性の獲得といったことの他に,細胞が個体を構成するメンバーとしての社会性を如何にして獲得するかを理解することは非常に重要なことである。

がん遺伝子の進化―発がん遺伝子と相同配列をもつ遺伝子

著者: 林田秀宜 ,   五條堀孝

ページ範囲:P.51 - P.55

 レトロウイルスのいろいろながん遺伝子の塩基配列が決定され始めた頃,sisというがん遺伝子が血漿板由来の成長因子PDGFの一部であることを最初に示唆したのは,R.Doolittleによる「相同性探索」というコンピュータを用いた遺伝情報解析であった。ご存知のように,「相同性探索」というのは,今までに決定されたDNA配列データを計算機にデータベースとして格納し,機能が未知の配列とデータベースにある既知の配列(アミノ酸配列でもよいし,塩基配列でもよい)と比較し,配列上の類似度が一定程度以上あるような配列を探索して,未知の配列の遺伝子機能を推測するものである。本稿では,がん遺伝子に注目して,この相同性探索による最新の研究成果を報告したい。
 がん遺伝子はトリや哺乳類のレトロウイルス,および宿主細胞そのものから多数の種類が分離され,それらがコードしていると考えられる蛋白質のアミノ酸配列の相同性や活性に基づいてsrc族やras族などのいくつかのグループに分類されている。しかも,次々と新しいがん遺伝子およびその関連遺伝子が今もなお決定されている。本稿では,「相同性探索」などのコンピュータ解析による成果が著しい,masがん遺伝子とそれと相同性のあるロドプシン超遺伝子族の機能と進化について述べる。

コンピュータによる遺伝子の機能の推定―がん遺伝子を中心に

著者: 宮田隆 ,   岩部直之

ページ範囲:P.56 - P.60

 最近コンピュータを利用して,特定の遺伝子に相同な遺伝子をデータベース中に探査する,いわゆる「ホモロジー探査」が分子生物学者の間に普及しつつある。このコンピュータ法は,がん遺伝子などにしばしば見られるように,細胞の表現型の変化が特定の遺伝子上の変異に起因することが理解できているが,その遺伝子の生化学的機能が同定できていない場合,あるいは合成プローブなどでcDNAを単離した場合,など機能未同定遺伝子に対して,その機能を示唆する上でとくに有効である場合がある。ここでは二つの方法,すなわちホモロジー探査法と分子系統樹による機能の推定法について,がん遺伝子あるいはがん関連遺伝子を中心に述べてみたい。前者の一部はすでに普及しているが,後者はまだ試みの段階である。ここで述べる方法が,がん研究の一助となれば幸いである。

連載講座 新しい観点からみた器官

大腸―分泌器官としての大腸上皮

著者: 鈴木裕一 ,   寺川進

ページ範囲:P.63 - P.69

 大腸の主要な役割は,口から入ったりあるいは消化吸収の際に分泌された水や電解質を,消化吸収の完了後に腸管から回収することである。実際,魚類では必ずしも明確でなかった大腸は,水分の保持を絶対的な課題とする両生類以降の陸生動物になって初めて,小腸と明確に区別できる独立した部分として認められるようになる。両生類,は虫類,鳥類の大腸末端には尿管が開口し総排泄口となっているが,大腸はここから逆流してきた尿を再吸収することも行い,腎臓での水分電解質保持機能を助けている。哺乳類になると,大腸と泌尿器系は互いに独立する1)
 大腸は動物による違いが著しい。これは,小腸が比較的動物差がないのと際だった対照をなす。この違いは主としてその動物の食性を反映しており,草食動物でとくに発達している。一般に大腸内には多数の腸内細菌が常在しており,小腸で消化されなかった多糖類(食物線維)を発酵し,主として酢酸,プロピオン酸,酪酸などの短鎖の脂肪酸に変えているが,食物の主要な部分が食物線維である草食動物では,この過程が著しく発達しており,大量に産生された脂肪酸を吸収して主要な栄養としている。ヒトでも,栄養としての寄与は小さいが,この発酵過程は盛んに起こっている2)

実験講座

トランスジェニックマウスによる発がんの研究

著者: 山村研一

ページ範囲:P.70 - P.76

 現在のところがんを引き起こす原因として基本的には二つが考えられる。第一は,いわゆる活性化がん遺伝子によるものである。すなわち,何らかの原因でがん遺伝子の発現の異常が引き起こされるか,変異蛋白の産生が細胞がん化の主要因であると考えられるものである。現在,原因のよくわかっていないB型肝炎ウィルス(HBV)や成人性T細胞白血病ウイルス(HTLV-Ⅰ)などによるがん化も,あるいは未知のがん遺伝子の活性化による可能性もある。第二は,網膜芽細胞腫,Wilms腫瘍などの優性遺伝様式をとる疾患にみられるもので,いわゆるがんを抑制している遺伝子の欠失によると考えられるものである。最近の研究成果から推察すると,上記の基本的な変化がそれぞれ単独で細胞をがん化させているとは考え難い。むしろ複数の活性化がん遺伝子でがん化することもあれば,複数のがん遺伝子と複数のがん抑制遺伝子の欠失が必要なこともあるであろう。
 いずれにしても遺伝学的立場からすれば,がん細胞は正常細胞のミュータントと位置づけることができる。このミュータントの性状をDNAレベルで明らかにするためには組み換えDNA技術が必須であろうし,実際多くの成果があがっている。この技術と細胞への遺伝子導入の技術とが駆使されてがん遺伝子の存在が明らかとなったが,がんは本来一個体の中で発生するものであり,invitroの系ではやはり解析能力に限界がある。

話題

ヒト遺伝子地図作成に関する第10回国際ワークショップ

著者: 三木哲郎

ページ範囲:P.77 - P.79

 10th International Human Gene Mapping Workshop(以下HGM10)は,1989年6月11日から17日まで,米国コネチカット州ニューヘブンのエール大学で開催された。1973年にエール大学のF. H. Ruddleの提唱によって,ニューヘブンで第1回の会議(HGM1)が開催され,今年の会議は第10回となる。これを記念して再びニューヘブンで,Ruddleを主催者として開催された。表1にこれまでの開催地などを示す。世界各地よりヒトの遺伝子地図作成に関与している約650名の人類遺伝学者,分子生物学者などが集まり,新しく発見された遺伝子座位の登録と,これまでにすでに遺伝子座位の決定された遺伝子について見直しがされた。図1にHGM10までに遺伝子座位の決定された多型性DNAマーカーを示す。最近のヒトゲノムの全塩基配列決定のための種々のグループの計画と関連して,HGMの成果が注目されるところである。会議の内容は,以下のようである。
 Round Table;ヒトゲノム解析についてHGM,HUGOなどの代表者の討論があった。

基本情報

生体の科学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1883-5503

印刷版ISSN 0370-9531

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?