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文献詳細

雑誌文献

生体の科学41巻1号

1990年02月発行

文献概要

特集 発がんのメカニズム/最近の知見

GTP結合蛋白質と細胞がん化

著者: 佐藤孝哉1 上代淑人1

所属機関: 1東京大学医科学研究所化学研究部

ページ範囲:P.21 - P.25

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 I.GTP結合蛋白質を介するシグナル伝達
 多くのホルモン,神経伝達物質などは,細胞表面に存在する特異的なレセプターに結合し,その作用を細胞内に伝達している。その一つの様式として,アドレナージックレセプター-アデニル酸シクラーゼ系やロドプシン-cGMPフォスフォジェステラーゼ系などにおいては,G蛋白質を介するシグナル伝達系がよく研究されている(図1)1)。最近では,リン脂質代謝系やイオンチャネル系などにおいても,G蛋白質の関与を示唆するデータが数多く報告されている。一方では,蛋白質の精製,あるいはcDNAのクローニングにより,多数の構造の類似したG蛋白質の存在が明らかにされている。これらの遺伝子は一つの遺伝子群を形成していると考えられていて,おのおのが細胞内シグナルのトランスデューサーとして機能していると予想される(表1)2)
 G蛋白質は,α,β,γから成る三量体構造をとっており,このうちαサブユニットがGDP,GTPを特異的に結合している。GDPを結合した不活性型のG蛋白質は,レセプターからの刺激によって,GDP-GTP交換反応が促進され,GTPを結合した活性型へと変換される。これが下流のエフェクター分子と特異的に相互作用してシグナルを伝える一方,自らのGTPase活性により,結合しているGTPをGDPと無機リン酸に加水分解して,再び不活性型に戻る。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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