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文献詳細

雑誌文献

生体の科学41巻1号

1990年02月発行

特集 発がんのメカニズム/最近の知見

シグナル伝達と発がん―MAPsとMAPキナーゼ

著者: 星美奈子1 西田栄介1

所属機関: 1東京大学理学部生物化学科

ページ範囲:P.29 - P.32

文献概要

 微小管は細胞分裂期には紡錘体を,分裂間期には核近傍の中心体から細胞膜に向かって放射状のネットワークを形成している。微小管の機能としては,細胞分裂における染色体移動における役割がある。細胞運動ならびに細胞の形態形成における微小管の働きも解明されつつある。近年,細胞内微小管ネットワークが増殖シグナル伝達にも関与していることが示唆されている。静止期の細胞は,通常血清あるいは細胞増殖因子の刺激があって初めて増殖を開始するが,微小管脱重合剤であるコルヒチンを細胞に添加し細胞内微小管ネットワークを脱重合させるだけでも,細胞はS期に移行しDNA合成を開始する1,2)。微小管脱重合によって増殖因子として働く物質が培養液中に放出されるわけではない2)ので,増殖因子によるシグナル伝達経路の途中の段階が細胞質微小管の脱重合によって引き起こされ,そこから通常の伝達経路に合流しDNA合成にいたると筆者らは考えている3)
 発がん機構は正常細胞の増殖機構と密接に関係しており,正常細胞における増殖シグナル伝達機構の解明は,発がん機構の解明の鍵となろう。正常細胞の増殖は各種増殖因子によって制御されているが,増殖因子受容体が,がんウイルスのがん遺伝子産物と同じくチロシンキナーゼ活性を有すること4)は,発がん機構においてだけでなく,正常細胞の増殖シグナル伝達機構においてチロシンキナーゼ活性が重要であることを示唆している。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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