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特集 発がんのメカニズム/最近の知見
染色体異常と発がん―欠失とがん抑制遺伝子
著者: 占部和敬1 笹月健彦1
所属機関: 1九州大学生体防御医学研究所遺伝学部門
ページ範囲:P.41 - P.46
文献購入ページに移動 1969年Harrisら1)は,エーリッヒ腫瘍細胞などのマウスの悪性腹水腫瘍細胞とマウス線維芽細胞A9細胞との融合実験から,“A9細胞は,腫瘍細胞の悪性形質を抑制する何かを融合細胞に寄与している。この寄与は融合細胞からある染色体が脱落すると失われる”と結論し,正常細胞ではがん化を抑えている遺伝子,いわゆるがん抑制遺伝子が存在することを示唆した。しかし染色体の欠失,およびその機能欠失ががん化に関与するという考えを支持する研究は,思ったほど進まなかった。その理由としては,1970年代後半よりプロトオンコジーンが続々と発見され,その活性化プロトオンコジーンの研究が急激に進み脚光を浴びていたこと,さらには活性化プロトオンコジーンは,優性に働き,正常細胞に導入すると悪性形質を獲得するのでその検出がわりと簡単にできたが,対照的に,がん化に際して排除される遺伝子の検出ははるかに困難であったことがあげられる。様々ながんにおいて,染色体が欠失していることが染色体分析によって明らかになっていたが(表1),近年の分子生物学の目ざましい発展により,網膜芽細胞腫の第13染色体q14の欠失部位に存在する遺伝子,RB1遺伝子がクローニングされた。この成功によって,腫瘍特異的欠失部位の同定とそこに局在するがん抑制遺伝子のクローニングに目が向けられるようになった。本稿では,RFLP解析による染色体欠失部位とがん抑制遺伝子研究について概説してみたい。
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