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文献詳細

雑誌文献

生体の科学41巻1号

1990年02月発行

特集 発がんのメカニズム/最近の知見

細胞質と発がん―発がんおよび細胞分化における細胞質因子の役割

著者: 岩倉洋一郎1 平野哲男1

所属機関: 1東京大学医科学研究所ウイルス感染研究部

ページ範囲:P.47 - P.50

文献概要

 生物個体を構成する多種多様の細胞の増殖をコントロールし,組織特異的な遺伝子発現を行わせることは,生物の生存にとって必須のことである。ところが,時々このような制御を逸脱し,異常な挙動を示す細胞が現れ,個体の生存を脅かす場合がある。これががん細胞と呼ばれる。がん細胞の特質は本来その細胞が個体の中にあって従うべき時間的・空間的制約から逸脱して増殖することであり,細胞増殖の異常と同時に分化形質の発現異常を伴うことが多い。このことは,必ずしも細胞自身の異常を意味せず,たとえば正常な胚でも子宮以外の場所に移植すれば容易にがん増殖し1),逆に初期胚由来の胚性癌腫(Embryonal carcinoma:EC)細胞でも正常な初期胚に戻してやれば立派に個体の一部を形成する2)ことはよく知られた事実である。したがって細胞のがん化を理解するうえで,複製装置自身の異常による無限増殖性の獲得といったことの他に,細胞が個体を構成するメンバーとしての社会性を如何にして獲得するかを理解することは非常に重要なことである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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