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文献詳細

雑誌文献

生体の科学41巻1号

1990年02月発行

文献概要

連載講座 新しい観点からみた器官

大腸―分泌器官としての大腸上皮

著者: 鈴木裕一1 寺川進2

所属機関: 1山形大学医学部第2生理学教室 2生理学研究所機能協関部門

ページ範囲:P.63 - P.69

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 大腸の主要な役割は,口から入ったりあるいは消化吸収の際に分泌された水や電解質を,消化吸収の完了後に腸管から回収することである。実際,魚類では必ずしも明確でなかった大腸は,水分の保持を絶対的な課題とする両生類以降の陸生動物になって初めて,小腸と明確に区別できる独立した部分として認められるようになる。両生類,は虫類,鳥類の大腸末端には尿管が開口し総排泄口となっているが,大腸はここから逆流してきた尿を再吸収することも行い,腎臓での水分電解質保持機能を助けている。哺乳類になると,大腸と泌尿器系は互いに独立する1)
 大腸は動物による違いが著しい。これは,小腸が比較的動物差がないのと際だった対照をなす。この違いは主としてその動物の食性を反映しており,草食動物でとくに発達している。一般に大腸内には多数の腸内細菌が常在しており,小腸で消化されなかった多糖類(食物線維)を発酵し,主として酢酸,プロピオン酸,酪酸などの短鎖の脂肪酸に変えているが,食物の主要な部分が食物線維である草食動物では,この過程が著しく発達しており,大量に産生された脂肪酸を吸収して主要な栄養としている。ヒトでも,栄養としての寄与は小さいが,この発酵過程は盛んに起こっている2)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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