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特集 シナプスの形成と動態
シナプス発芽に関する最近の知見
著者: 小田洋一1
所属機関: 1大阪大学基礎工学部生物工学教室
ページ範囲:P.171 - P.178
文献購入ページに移動 “Formation of new synapses is a likely basis forlearning-like Phenomena”とは固定された脳組織を眺め続けてきた偉大な解剖学者Ramon y Cajalの偉大な仮説1)である。脳の機能のなかでもっとも重要な学習や記憶のメカニズムに,シナプスの新生が含まれるであろうという考えはすでに100年も前からあったのだが,実験的にそれを証明することは大変難しいことであった。運動神経の側枝発芽2)や中隔核ニューロンでの側枝発芽3)に始まるシナプス発芽の実験的な証明の多くは,これまで除神経や脳に損傷を与えて入力の一部を破壊するという操作のもとでなされてきた4)。しかし,シナプス発芽は脳損傷などという通常生体が体験しない異常な条件でのみ起こるのであろうか?シナプス発芽に関する最近の知見で注目すべきものは,シナプスの発芽・新生はシナプスの形成段階はもとより,その維持あるいは学習・記憶をも含む本質的な脳機能にとっても大切な現象であるという報告である。ここでは除神経や脳損傷によらずに起こるシナプス発芽のいくつかを紹介し,それらがニューロン活動によって制御されていることを示す。
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