icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学41巻5号

1990年10月発行

文献概要

特集 LTPとLTD:その分子機構

長期増強現象のCa依存性機構

著者: 工藤佳久1

所属機関: 1三菱化成生命科学研究所脳神経薬理学研究室

ページ範囲:P.452 - P.457

文献購入ページに移動
 “長期増強現象(LTP)”や“長期抑圧現象(LTD)”が端的に発現する海馬や小脳は,その神経回路が特徴的な層構造を持っており,数種のニューロンで構成された回路が整然と配置されている。これらの組織が記憶の成立に深く関わっていることはこれまでの生理学的また病理学的研究によって認められており,整然とした回路の層構造は,まさに記憶素子または記憶成立前駆素子としての機能を強く印象づける。これらの素子における回路強化現象としてのLTPやLTDが記憶メカニズムの解決の糸口を与えるものと期待されるのももっともなことである。この10年間の研究で,その回路強化のメカニズムに細胞内Ca濃度の上昇が関わっている可能性が示唆されてきたのである。Caの動態は電気生理学的に類推でき,生化学的にはCaを引金として活動する細胞内機能素子も多数示唆されてきているので,Caが電気生理学的研究と生化学的研究の橋渡しになることが期待されてきた。しかし,両者の解析の時間的な差が障害となって必ずしもすっきりとした相関性が得られていたわけではない。しかし,1983年に細胞内Ca濃度を容易に測定できる螢光Ca指示薬,fura-2が発表されて以来,生理現象と生化学現象との橋渡しとしてのCaの役割がより明確に論ぜられるようになった。この項では,海馬LTPの成立とCaの関係についてまとめてみたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?