icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学41巻5号

1990年10月発行

文献概要

特集 LTPとLTD:その分子機構

長期増強とCキナーゼ

著者: 山本長三郎1

所属機関: 1金沢大学医学部第二生理学教室

ページ範囲:P.464 - P.467

文献購入ページに移動
 I.長期増強とCキナーゼの関連を示す実験事実
 1.フォルボルエステルとオレイン酸の作用
 Cキナーゼは,Ca2+とリン脂質(とくにフォスファチジルセリン)に依存性の蛋白リン酸化酵素である1)。フォスフォリパーゼC(PLC)によって膜のフォスファチジルイノシトル4,5二リン酸(PLP2)が分解された時に生ずるジアシルグリセロール(DG)は,CキナーゼのCa2+要求濃度を著しく低下させ,Cキナーゼの活性調節因子として働く。Cキナーゼの基質は非常に広く,種々の受容体や膜結合蛋白もその中に含まれている。Cキナーゼを賦活する経路として,上記PLC経路以外にフォスフォリパーゼA2(PLA2)が提唱されている2)。PLA2が膜脂質を分解して生じた不飽和脂肪酸(オレイン酸など)がCキナーゼを賦活するという。
 Cキナーゼと長期増強との関連を支持する多くの根拠が提出されている。Malenkaらは,CA1野において連合・交連線維刺激に応ずる場の電位が,フォルボルエステル(Cキナーゼの賦活薬)の適用中に著明に増大し,同エステルを洗い去っても増大効果は長く持続することを見出した3)。また高濃度のフォルボルエステル(10μM)の作用下で電位が増大した後は,入力の高頻度刺激がもはや長期増強を誘発しないことから,薬物と高頻度刺激が同一の経路(Cキナーゼの賦活)を介するのであり,長期増強はCキナーゼの賦活によって生ずると考えた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?