icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学41巻5号

1990年10月発行

文献概要

特集 LTPとLTD:その分子機構

LTPのシナプス発芽への移行

著者: 村上富士夫1

所属機関: 1大阪大学基礎工学部生物工学科

ページ範囲:P.483 - P.487

文献購入ページに移動
 LTPはその名の示すごとく非常に長期に亘ってシナプス増強が持続する現象であり,Blissらは無麻酔ウサギを用いて,16週に及ぶLTPをウサギの海馬で観察している1)。本特集でも詳しく述べられているように,その発生のメカニズムに関してはこの10年間の研究によって著しく理解が進んだ2-5)。しかしその長期に亘る維持の機構は明らかではない。一方,近年のシナプスの可塑性に関する形態学的・生理学的研究により,脳の発達期は言うまでもなく,成熟後もシナプスは形態学的変化を起こし得る柔らかい性質を備えたものであることが明らかになってきた6,7)。シナプスの形態学的変化はその伝達特性を変えるばかりか,非常に長期にわたってその変化は維持される。したがってLTPの維持のメカニズムとしてシナプスの形態学的変化(シナプス発芽)が関与しているとの考えは魅力ある仮説である。本稿では海馬を用いた研究を中心にこの仮説について様々な角度から検討を加えてみたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?