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特集 LTPとLTD:その分子機構
LTPと老化
著者: 佐藤公道1 香月博志1
所属機関: 1京都大学薬学部薬理学教室
ページ範囲:P.496 - P.500
文献購入ページに移動 海馬の入力線維に刺激電極を刺入し,短時間高頻度の刺激(テタヌス刺激)を与えるとその後長時間にわたってシナプス伝達効率の増強が観察される。長期増強(Long-Term Potentiation;LTP)と呼ばれるこのシナプスの可塑性は,海馬のみならず大脳皮質・上丘など中枢神経系の他の部位でも観察されているが,最初の発見部位である海馬でもっとも容易かつ確実に発現し,生理的に起こり得る高頻度神経興奮によっても発現する可能性が指摘されている。海馬は臨床観察・動物での行動実験などの知見からある種の記憶・学習機能(空間記憶・作業記憶など)に深く関わっている脳部位であることが知られている。海馬でのLTPは持続が長時間(数日から数週間)に及び,またその性質に連合学習との共通性がみられることなどから,学習・記憶の基礎過程として注目されてきた。しかし,海馬におけるLTPと実際の学習行動との直接的な関連を調べた研究は意外に少ない。この面からのアプローチとして,ウサギの瞬膜反射条件付けとの対応性を示唆する一連の研究がよく知られている1)。しかし,この例にしても瞬膜反射をいかにして海馬が制御しているのかという点は明らかになっておらず,小脳における運動学習のように行動と神経回路網との明確な対応づけにまで至っていない。
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