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連載講座 新しい観点からみた器官
肝臓:その組織構築の重要性
著者: 市原明1
所属機関: 1徳島大学酵素科学研究センター酵素病理学部門
ページ範囲:P.510 - P.512
文献購入ページに移動 肝臓は生体の代謝の大部分を担っている臓器であり,たとえば血糖の調節,大部分の血液蛋白の合成分泌,解毒,尿素形成,胆汁分泌,ビタミンの活性化,グルタチオンやメタロチオネインの合成などその機能は実に多様である。またこれらの機能は食物,神経,ホルモンで多彩に調節されている。また肝臓は再生能力の強い臓器で実験的にも臨床的にも肝部分切除後の回復は速い。このような複雑な機能や再生機構を明らかにするのに従来用いられてきたインビボ,灌流,あるいは無細胞系,酵素系では実験系が複雑すぎたり,逆に単純すぎて肝臓の全体像を把握することは困難である。ことにホルモンの影響や肝再生機構の解明にはどうしても培養細胞レベルの研究が必要になってくる。しかし20年前まで培養肝細胞はすべて樹立株であり,機能も多く脱落し,ホルモン効果も欠損し,また無限増殖するような癌化細胞が主であった。これでは正常の肝機能の研究には適当でない。しかし1970年代の前半からコラゲナーゼで分離した肝細胞はこれらの欠点を除き最初に述べた多くの肝機能を維持し,また種々のホルモン(インスリン,グルカゴン,カテコラミン,ステロイドホルモンなど)にも応答する。さらに1980年代になってこのような分化型肝細胞が培養系で増殖する条件も明らかとなってきた。
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