文献詳細
文献概要
特集 脳と免疫
痛みによる免疫反応の促進
著者: 藤原良一1 横山三男1
所属機関: 1久留米大学医学部免疫学教室
ページ範囲:P.6 - P.11
文献購入ページに移動 疼痛は,末梢における痛覚器官から一次ニューロンにより脊髄後核に入り,視床後膜側核までの二次ニューロン,さらには大脳皮質の知覚領への三次ニューロンによって伝達される。一方,痛覚には精神的要素も加わり,その発現を複雑にしている。しかし,痛覚の発現機序やその抑制などについての研究は枚挙にいとまないが,痛覚の合目的性についての論文はほとんどみられない。たとえば,動物(人間も含めた)が痛覚を予期することによって多くの危険から身を守る術を学習してきたように,痛覚は生体を防御する機構の中で実に合目的な役割を果たしている。すなわち,日常行動においても,その失敗が疼痛を負荷される場合がある(熱いヤカンに触れることなど)ように,疼痛は学習の強化因子として働いている。
さらに,疼痛部位を認識することによって病巣保護にも役立っている。この場合も,病巣の再刺激によって負荷される疼痛と,それに伴う不快感を強化因子とした学習の効果によるものである。それゆえに,痛覚は物理的要素と,精神的要素を合わせもった生体防御系として恒常性の維持に役立っている。すなわち,初めての刺激は皮膚の感覚器官を通じてin putされるが,2回目からは学習の効果により五感を働かせてこの刺激を予知し身構えるdefenseやoffenseの行動をとるようになる。このことは,痛覚は神経学的には危険信号の伝達であるが,情動的にはストレッサーと考えられる。
さらに,疼痛部位を認識することによって病巣保護にも役立っている。この場合も,病巣の再刺激によって負荷される疼痛と,それに伴う不快感を強化因子とした学習の効果によるものである。それゆえに,痛覚は物理的要素と,精神的要素を合わせもった生体防御系として恒常性の維持に役立っている。すなわち,初めての刺激は皮膚の感覚器官を通じてin putされるが,2回目からは学習の効果により五感を働かせてこの刺激を予知し身構えるdefenseやoffenseの行動をとるようになる。このことは,痛覚は神経学的には危険信号の伝達であるが,情動的にはストレッサーと考えられる。
掲載誌情報