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文献詳細

雑誌文献

生体の科学42巻1号

1991年02月発行

文献概要

連載講座 新しい観点からみた器官

破骨細胞―その研究のながれ

著者: 田中栄12 黒川高秀1 須田立雄2

所属機関: 1東京大学医学部整形外科学教室 2昭和大学歯学部生化学教室

ページ範囲:P.49 - P.56

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 古典的な意味での骨格とは,生体の支持組織としての骨格であり,その役割は生体の形状を保ち,内臓を保護することであると考えられていた。たしかに成長期のモデリングが終了すると骨はその形態をほとんど変えず,あたかも静止しているかのように見える。しかしたとえば骨折の治癒過程を見ても明らかなように,骨組織はいったんそのような病的状況が生じると再び活発に活動を開始する。また生理的にも骨組織は決して静止している訳ではなく,常に吸収と形成を行っており(リモデリング),これらのバランスのなかで生体の形状が保たれている(図1)。このように動的なものとして見た場合,骨組織が非常に特殊な組織であることに気づく。骨組織は,損傷をうけても正常な治癒過程をたどれば瘢痕を残さずに治癒するという点で非常に特殊である。またその治癒過程において,力学的な要請に応じて骨はその形態を変化させてゆき,本来の姿に戻ろうとする。このように骨組織とは非常に柔軟性に富んだ組織である。視点をマクロからミクロな立場に移すと,骨のリモデリングの中心となっているのは骨芽細胞,破骨細胞と呼ばれる二種類の細胞である。字のごとく骨芽細胞は骨の形成,破骨細胞は骨の吸収を司っているのであるが,最近の研究によってこれらは独立に働いているのではなく,互いに深くかかわり合いながら骨の改変を行っていることが明らかとなってきた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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