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文献詳細

雑誌文献

生体の科学42巻2号

1991年04月発行

文献概要

特集 脳の移植と再生

嗅球の移植と再生

著者: 藤井正子1

所属機関: 1浜松医科大学解剖学第1講座

ページ範囲:P.113 - P.119

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 マウスやラットのような巨嗅動物(macrosmatic animal)にとって嗅球は生存上もっとも重要な感覚器官であることは言うまでもない。両側嗅球の切除はこのような動物にいろいろな行動異常をもたらすが,とくに嗅球除去母親ネズミが,産んだ仔を食べてしまう現象はよく知られている。ヒトでは,感覚系としての役割が重視されていないため,脳移植研究の対象からはずされる感がある。最近,移植嗅球が,宿主脳内で簡単に軸索を伸ばすことが分かってきた1-3)。そこで,移植嗅球の宿主内軸索伸長の現象を中心にして再生の問題にも触れながら述べていきたいと思う。
 宿主脳内で軸索を伸ばすということがなぜ問題になるかというと,まず,適切な軸索伸長により標的に達し,ここでのシナプス結合形成が神経回路網を作り出す基本であるからである。脳の損傷の修復のための脳移植を考える場合,移植脳が宿主脳内で安定した機能系を確立し,損傷された神経回路網が再現されるためには,宿主脳内への軸索伸長がその第一歩となる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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