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特集 脳の移植と再生
文献概要
パーキンソン病は黒質・線条体ドーパミンニューロンの変性消失を主病変とし,その治療法としてドーパミンの前駆物質であるL-DOPAの投与が有効であるといわれてきた。この治療法は黒質線条体ニューロンがその機能を発揮するために持続的調節発火を行っていることから,L-DOPA投与により線条体でのドーパミン濃度を上げればよいという考え方から理解される。しかしL-DOPA長期投与症例が増加するにつれ,効果の減退(wearing off),on-off減少,ジスキネジアなどが出現し,単なる神経伝達物質の補充ではパーキンソン病の治療として十分とはいえなくなってきた。つまり黒質線条体神経回路の再構築,あるいは患者自身の神経回路網により調節された黒質線条体へのドーパミンの供給が必要と考えられる。これが神経移植によるパーキンソン病治療の根拠とするところである。パーキンソン病における神経移植には胎児黒質をドナーとして用いるのが最良である。それはパーキンソン病で失われた黒質ドーパミン細胞そのものを補充し,なおかつ胎児神経細胞が増殖・再生し得るからにほかならない。しかしその臨床応用については胎児脳をどこから入手し,生きたままの状態で成人脳内に移植できるか,倫理上大きな問題である。さらにnonselfとしての胎児脳に対する拒絶反応の問題も解決せねばならない。そこで胎児神経細胞の移植に代わる方法として自家組織を脳内移植する方法が考えられる。
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