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特集 脳の移植と再生
脳の白質内への神経細胞の移植
著者: 鈴木満12
所属機関: 1英国国立医学研究所神経生物学研究室 2岩手医科大学神経精神科
ページ範囲:P.136 - P.140
文献購入ページに移動 I.脳の機能修復と再生
神経組織の移植は,神経科学研究における新しい実験手技として近年急速に普及しただけではなく,パーキンソン病の治療法としていくつかの国で臨床応用されつつある。成熟した哺乳類の脳に限って言うならば,ひとたび損傷を受けた脳の機能修復は,末梢神経や他の臓器のそれに比べると著しく難しい。この修復を移植片である神経組織に担当させようという発想が上記の「治療を目的とする神経組織移植」に発展したと言えよう。一方,脳の機能修復を困難にしているのは,中枢神経系の特質とも言える「再生しにくさ」の機構によるところが大きい。脳の再生研究とは,脳に内在する「軸索の再生しにくさ」についての研究と言い替えることができる。したがって,再生機構の研究と臨床的に関係が深いのは,脊髄損傷や脱髄性疾患に代表される中枢神経路における病変である。
実験動物を用いた再生機構の研究には大別して三つのアプローチがある。まず,再生時には正常の発達と相似の現象が起こるという仮定から,正常脳における軸索発達の研究は再生研究にとっても基本的な情報を提供する。次に,中枢神経系の神経線維路を傷つけてその後の経過を観察しようというのがもっとも直接的な研究方法である。そして,三番目が神経組織の移植手技を用いた再生機構の研究である。
神経組織の移植は,神経科学研究における新しい実験手技として近年急速に普及しただけではなく,パーキンソン病の治療法としていくつかの国で臨床応用されつつある。成熟した哺乳類の脳に限って言うならば,ひとたび損傷を受けた脳の機能修復は,末梢神経や他の臓器のそれに比べると著しく難しい。この修復を移植片である神経組織に担当させようという発想が上記の「治療を目的とする神経組織移植」に発展したと言えよう。一方,脳の機能修復を困難にしているのは,中枢神経系の特質とも言える「再生しにくさ」の機構によるところが大きい。脳の再生研究とは,脳に内在する「軸索の再生しにくさ」についての研究と言い替えることができる。したがって,再生機構の研究と臨床的に関係が深いのは,脊髄損傷や脱髄性疾患に代表される中枢神経路における病変である。
実験動物を用いた再生機構の研究には大別して三つのアプローチがある。まず,再生時には正常の発達と相似の現象が起こるという仮定から,正常脳における軸索発達の研究は再生研究にとっても基本的な情報を提供する。次に,中枢神経系の神経線維路を傷つけてその後の経過を観察しようというのがもっとも直接的な研究方法である。そして,三番目が神経組織の移植手技を用いた再生機構の研究である。
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