実験講座
マイクロウェーブ固定法
著者:
水平敏知1
長谷川博司1
能登谷満1
所属機関:
1塩野義製薬株式会社研究所神崎川分室
ページ範囲:P.148 - P.159
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Mayers(1970)1)がマイクロウェーブ照射(MWI)で組織の固定法を試みて以来20年が経過した。元来1930年頃から米軍関係者達の間で生体に対する大まかな影響が検討されていたが,第二次大戦初期に英軍医がレーダー操作兵に白内障が生じやすいことを報告,ウサギ眼球での熱作用のデータなどが調べられた2)。しかしその後三つの研究グループに発展してきた2,4-7)。(1)理論を含む生体への大まかな影響,(2)生理・薬理学者達の一部のグループが脳神経刺激物質の正しい定量の目的で強力な(10~100kW)照射装置を用い,脳の一部をミリセカンド・レベルで照射して焼き,(3)組織の固定の目的で用いるものである2,4-7)。著者は総説も含めてすでに数編に及ぶ類似内容の記述をしてきたので,文献を含めてそれらを参照願いたい2,4-7)。一つ興味のあることは,この方法(以下組織固定法を中心として)の発達は主として欧州,とくにオランダの臨床病理学者達によって発展してきたもので,後半にごく数人の米国やオーストラリアなどの病理学者が参入,最後に日本のわれわれが加わってきたものである。日本でも文献的には多くの人々が承知していても,何もそんな方法を用いなくともということで誰も手をつけなかったものであろう。