特集 ペルオキシソーム/最近の進歩
ペルオキシソーム形成因子
著者:
塚本利朗1
三浦恵2
下澤伸行23
藤木幸夫2
所属機関:
1姫路工業大学理学部生命科学科細胞機能学講座
2明治乳業ヘルスサイエンス研究所
3岐阜大学医学部小児科
ページ範囲:P.175 - P.179
文献購入ページに移動
ペルオキシソームは真核細胞生物に広く存在する細胞内小器官の一つであり,種々の重要な機能を有している。その形成機構については,細胞質の遊離型ポリソームで合成された構成蛋白質が翻訳後に,すでに細胞内に存在しているペルオキシソームに輸送され,その結果ペルオキシソームが成長,分裂して増えていくというモデルが一般に受け入れられている1)。ペルオキシソームが細胞内で安定に存在していくためには,多くの因子の関与が考えられる。新たに合成されたペルオキシソーム蛋白質には局在化のためのシグナルが存在し,またそのシグナルを認識するレセプターや膜を介した蛋白質輸送のための装置の存在がペルオキシソーム膜上に想定される。また細胞質に存在して,膜透過に適するように蛋白質の高次構造をほどくいわゆるunfoldaseや,ペルオキシソームの構造を維持し,分裂に関与する因子なども含まれるであろう。これら諸因子のうち局在化シグナルについては,われわれのグループを含め,in vivo2),in vitro3)の移送実験により,ある程度その実体が明らかにされてきている。しかしながら,それ以外の因子については,ペルオキシソームの形成過程そのものが複雑なこともあり,ほとんどその実体は不明である。しかしこれらの因子のいずれかに異常がおきた場合,ペルオキシソーム形成過程が障害されると考えられる。