文献詳細
特集 開口分泌の細胞内過程
文献概要
エキソサイトーシス(開口分泌)過程はほとんど電子顕微鏡的な手法で観察研究されてきており,光学顕微鏡的にこれを観察した例は卵細胞や肥満細胞など特別な細胞に限られていた。一般的な外分泌,内分泌細胞,また,神経分泌細胞,そして,神経終末ではそれと思われる反応が見られず,エキソサイトーシス仮説の画竜点睛を欠くところとなり,この仮説に対する反対を誘った。EdwardsとEnglertを中心とするグループは,微分干渉顕微鏡と画像処理装置を用いて培養クロマフィン細胞を観察し,開口分泌らしきものが見えると報告した1)。しかし,その画像は不明瞭で,信ずる学者は少なかった。われわれは最新の微分干渉顕微鏡,CCD型ビデオカメラ,高速画像処理装置などを用いて,15,000倍以上の超高倍率で分泌細胞のビデオ観察をしたところ,意外に容易に,明瞭な開口像が捉えられた2)。画像処理装置はコントラスト増強により光顕の分解能を上げ,反応前後の差画像や時間微分画像を作ることにより,分解能以下の微小顆粒を可視化する。微分干渉顕微鏡は偏光を使い,標本上の屈折率勾配に基づく干渉効果によって,細胞を1μmの厚さで薄切りにしたような明暗像を作り出す(光学的断層化)ので,構造の重なりが少なく,高い空間分解能が達成できる。これにより開口分泌をいわば直視することが可能となった。
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