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文献詳細

雑誌文献

生体の科学42巻4号

1991年08月発行

文献概要

実験講座

マイクロウェーブ急速凍結―電子顕微鏡観察用生物試料固定法

著者: 市川道教1 松本元1

所属機関: 1電子技術総合研究所超分子部生体機能研究室

ページ範囲:P.312 - P.318

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 生物の微細構造(1~10nmの解像度)を観察しようとすると,現在のところ電子顕微鏡に頼らざるを得ない。そこで,試料を真空中に曝すことになり,固定する必要がある。化学固定剤(グルタアルデヒド,ホルマリンなど)で固定することが一般的である。しかし,化学固定は生きている状態を固定するのではなく,生物試料と固定剤との平衡状態として作られる(死んでいる状態の)構造を固定する。このため,近年生物試料から急速に(数ミリ秒の時間オーダーで)熱を奪うことで凍結固化する急凍法が開発されてきた。この方法は,試料を生きている状態のまま急速凍結できるので,固定時の生理条件と微細構造とを対比させることができる。すなわち,急凍法によって,生理学と電子顕微鏡による形態学がはじめて直結し得る,のである。しかし,急凍法では生物試料に含まれる水の氷晶化をいかにして防ぎ,試料の広範囲にわたって生きている状態を保つかが難しく,従来この困難のために広く普及していなかった。本研究では,マイクロ波を利用することによってこの困難を克服し,急凍法によって再現よく固定する方法を開発したものである。
 生物試料の急速凍結試料固定法(急凍法)は,化学固定による電子顕微鏡試料作成に比較すると,試料組織を変性させることが少なく1),また生物のダイナミックな現象を時間分解で観察することができる2)など,の利点がある。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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