1900年代を閉じて2000年代に入ろうとする現在,医学・生物学の中心となるのは神経科学であろうということは間違いはない。その根底には解き明かすことがもっとも困難であり,それだけにchallengingである,という科学者の冒険心が存在する。
「生体の科学」が年一度の増大特集をはじめて8回目となる。今回は今後の医学・生物学の中心的テーマとなっていくであろう神経系に作用する薬物マニュアルを企画した。この領域には非常に多くの薬物,というよりむしろ毒物である,toolとしての薬物が使われるようになっている。この領域を整理しておく必要があるのではないか,同時にこれら薬物の作用機序が細胞レベル,分子レベルでわかりつつある,それらをふまえてマニュアルを作ろうというのがわれわれの意図であった。実際にはその分類法も,現在その作用の解明が進行中のものが多く混乱しているし,オーバーラップしているものも出てきている。またこれまでの増大特集号の“細胞毒マニュアル”(1984),“研究室で役に立つ新しい試薬”(1989)でも触れたものもある。あれやこれやで未完成の形でこの号を出さざるを得なかった。
雑誌目次
生体の科学42巻5号
1991年10月発行
雑誌目次
特集 神経系に作用する薬物マニュアル
序 フリーアクセス
著者: 編集委員
ページ範囲:P.336 - P.336
Ⅰ.レセプターに作用する薬物
アデノシン受容体(プリン受容体)
著者: 中田裕康 , 黒田洋一郎
ページ範囲:P.338 - P.340
「概説」
アデノシンやATPなどのプリンヌクレオチドに対する受容体,すなわちプリン受容体はアデノシン選択性が高いアデノシン受容体(P1受容体)とATPに選択的なATP受容体(P2受容体)に大別される。これらはさらにサブクラスに分類されている1,2)(表を参照のこと)。
アデノシン受容体は従来アデニル酸シクラーゼ活性への効果を指標としてA1(阻害)とA2(促進)の二つのサブクラスへ分けられているが,系によって微妙な差がでることが多く,さらに細かく分類する動きがある。A1,A2ともに哺乳類組織に広く分布するが,A1受容体は脳の大脳皮質をはじめ海馬や小脳,睾丸,脂肪細胞に高濃度に存在し,A2受容体も脳に一般的に分布し線条体にはとくに高濃度で存在するといわれている。脳のA1タイプの受容体はADO-1ともいわれ,神経終末からの伝達物質の遊離を抑制し,A2タイプの受容体はcAMPを二次メッセンジャーとして伝達物質の遊離を促進し,両者の記憶過程における重要性も示唆されている3)。
α-アドレナリン受容体
著者: 高柳一成 , 小池勝夫
ページ範囲:P.341 - P.346
「概説」
最初にアドレナリン受容体に着目したのはDaleであり,麦角アルカロイドの存在下でアドレナリンによる血圧上昇が下降に逆転することを見出し,アドレナリンのもつ生体反応には興奮性のものと抑制性のものの2種類があることを示唆した。その後,1948年,Ahlquist1)は種々の臓器における作動薬の効力を比較し効力順から2種類のアドレナリン受容体の存在を想定し,主としてアドレナリン>ノルアドレナリン>イソブロテレノールの順となる興奮性受容体をα,またイソブロテレノール>アドレナリン>ノルアドレナリンの順になる抑制性受容体をβと呼ぶことを提唱した。
β-アドレナリン受容体
著者: 高柳一成 , 小池勝夫
ページ範囲:P.347 - P.352
「概説」
前項のα-アドレナリン受容体のところで述べたように,アドレナリン受容体はAhlquist1)によりα-受容体とβ-受容体の2種類に分類された。
本項では,まずβ-アドレナリン受容体の細分類について解説を加え,つづいてβ-アドレナリン受容体に作用する薬物および放射性リガンドについて概説する。
ベンゾジアゼピン受容体
著者: 栗山欣弥 , 廣内雅明
ページ範囲:P.353 - P.354
「概説」
ベンゾジアゼピン(BZP)受容体は,抗不安薬の代表的な薬物であるBZP誘導体の作用部位として,その存在が知られるようになった。このBZP受容体は薬物の選択性により,中枢Ⅰ型,中枢性Ⅱ型および末梢型の3種類に大別されている1)。このうち中枢性BZP受容体がGABAA受容体と機能的および構造的に共役した状態で存在しており,BZPの中枢作用の発現に関与すると考えられている。一方,末梢性BZP受容体は中枢性BZP受容体とは異なる蛋白分子であるが,その生理的役割については明確ではない。
BZP誘導体の主要な薬理作用は,抗不安作用,抗痙攣作用,睡眠作用,筋弛緩作用であるが,これらの作用を有するBZPはfull agonistと呼ばれている。さらに最近ではBZP誘導体以外の薬物,すなわち非BZP系抗不安薬の多くも,中枢性BZP受容体に結合することにより作用することが明らかになってきている。またこれらの薬物は抗不安作用,抗痙攣作用などを示し,BZP誘導体の有する筋弛緩作用などの副作用の発現が認められないことを特徴とするものが多く,いわゆるpartial agonistとして作用していると考えられている(表1)2)。
GABA受容体
著者: 栗山欣弥 , 廣内雅明
ページ範囲:P.355 - P.356
「概説」
抑制性神経伝達物質であるGABA(γ-アミノ酪酸)に対する受容体がGABA受容体である。このGABA受容体はGABAAとGABABの2種類に大別されている。GABAの抑制作用はこれらの受容体を介して引き起こされる1)。
CCK受容体
著者: 的崎尚 , 坂本長逸
ページ範囲:P.357 - P.358
従来より,cholecystokinin(CCK)受容体には末梢型(type A)と脳型(type B)の2種類のサブタイプが存在するものと想定されている1,2)。末梢型(type A)受容体は主に膵,胆嚢,消化管平滑筋などに存在し,type B受容体は中枢神経系に多く分布することが知られている。この二つの受容体サブタイプの存在は,主に種々のCCKアナログやCCK受容体アンタゴニストがおのおのの受容体サブタイプに対して異なる親和性を有するという研究結果により明らかにされた(表1)。たとえば,CCK33やCCK8に比してCCK4やdesulfated-CCK8はtype A CCK受容体に対して弱い結合性しか有さない。一方,type B受容体に対してはCCK4やdesulfated-CCK8はCCK 8やCCK 33に近似な親和性を有している3)。さらに,CCK受容体アンタゴニストであるdibutyryl cGMP,CR 1409,および,benzodiazepine誘導体であるCBZ-CCK27-32NH2はtype A CCK受容体に対し結合性が強い。
ドーパミン受容体
著者: 山口時男 , 前野弘夫
ページ範囲:P.359 - P.365
「概説」
1.ドーパミン(DA)受容体研究の歴史
DA受容体に関する研究は1960年代半ばに開始された。1965年,Bloomら1)は尾状核においてDAの抑制性あるいは興奮性反応を検出し,1971年,Grengardら2)がDA感受性アデニレートサイクレース(AC)を発見した。当初この酵素系におけるDA結合部位が唯一のDA受容体と考えられていたが,臨床用量のHalo-peridolの血漿中濃度が10nM以下3)で,DA感受性ACを阻害する濃度よりはるかに低いことから,ACに関与しないDA受容体の存在が推定された。事実Seemanら4)は1974年に[3H]DAの受容体結合実験で,Halo-peridolに対して親和性の異なる少なくとも2種類のDA受容体の存在を示した。1978年,Spanoら5)はACと共役するDA受容体と共役しないDA受容体を示し,翌年Kebabianら6)は前者をD1受容体,後者をD2受容体と命名した。
AMPA受容体(キスカル酸受容体)・カイニン酸受容体
著者: 坪川宏 , 川合述史
ページ範囲:P.366 - P.368
AMPA受容体(キスカル酸受容体)
「概説」
AMPA受容体は,「3H]AMPAをリガンドとして持つionotropic型受容体で,アゴニストとの結合によりNa+,およびK+チャネルが開く。中枢神経系に広く存在する。旧来はキスカル酸受容体といわれていたものであるが,AMPAはキスカル酸よりも中枢神経系ではより選択的に作用する。すなわち,キスカル酸は[3H]kainate結合部位に対して弱い結合性を持つのに対してAMPAにはほとんどそれがない。またキスカル酸はmetabotropicなグルタミン酸受容体に働くがAMPAは作用しない。一方昆虫・甲殻類筋のキスカル酸受容体に対してAMPAは無効である1-3)。
メタボトロピックグルタミン酸受容体
著者: 杉山博之
ページ範囲:P.369 - P.370
「概説」
メタボトロピックグルタミン酸受容体(mGR)は神経伝達物質としてのグルタミン酸の受容体の一つであるが,イオンチャネルとは直接共役せず,むしろある種のG蛋白質と共役し,これを介して細胞内のイノシトールリン脂質代謝回転を引き起こすタイプのものを指す1)。他のG蛋白質共役型伝達物質受容体と同様,ポリペプチドモノマーとして機能し,各分子内には七つの膜貫通領域があると考えられている。この受容体の薬理学的性質は主として,アフリカツメガエル卵母細胞に外来性mRNAを注入しこの受容体を誘導した系2)と,脳スライスでイノシトールリン脂質分解を生化学的に測定する系3)の二つの系で分析されてきた。アゴニストとしては現在のところ,表1に示した七つのものが知られているが,イオンチャネル型グルタミン酸受容体と共通のものが多い。たとえば,ibotenate,L-homocystein sulfinate,NMAAはNMDA型受容体のアゴニストでもあり,quisqualateはnon-NMDA型受容体のアゴニストでもある。その点,trans-ACPDはmGRに対する選択性が高く,もっとも選択的なアゴニストと言える。アンタゴニストについては,あまり有効なものが知られておらず,とくに,従来イオンチャネル型グルタミン酸受容体に対してアンタゴニストとして作用することが知られていた薬物のほとんどが,この受容体に対して阻害効果を示さない。
N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体
著者: 米田幸雄 , 荻田喜代一
ページ範囲:P.371 - P.372
「概説」
哺乳動物中枢神経系のイオノトロピック型興奮性アミノ酸受容体のサブタイプの一つであるNMDA感受性受容体は,その活性化に伴い主にCa2+の細胞内流入が惹起される。本受容体は記憶形成・学習に関与するばかりでなく,神経細胞壊死や種々の神経精神疾患の発症に深い関連性を持つ1-3)。NMDA受容体は,少なくとも4種類〔①NMDA認識部位,②グリシン(Gly)認識部位(GlyB部位),③ポリアミン(PA)部位,④イオンチャネル部位〕のサブコンポーネントから構成される受容体イオノフォア複合体である。NMDA認識部位,GlyB部位およびPA部位は,いずれもレセプター機能の増強部位であり,とくにNMDA認識部位およびGlyB部位はイオンチャネルの活性化に必須である。このイオンチャネル部位には,Mg2+部位,Zn2+部位,H+部位,および非競合的アンタゴニスト結合部位(PCP部位)の活性抑制部位が存在する4-6)。
グリシン受容体(非NMDA-グリシン部位)
著者: 赤池紀扶 , 原田伸透
ページ範囲:P.373 - P.374
「概説」
グリシン(Gly)受容体はCl-チャネルと複合体を形成し抑制性神経伝達を仲介するものと,NMDA受容体-カチオンチャネル複合体上にありNMDA応答を増強して興奮性神経伝達を促進するものの2種類に分類される。前者はストリキニーネ(STR)によりGlyの結合が阻害され,後者は7-クロロキヌレン酸1)およびインドール-2-カルボン酸2)により選択的に拮抗される。このことから両者をSTR感受性,および非感受性Gly受容体と呼ぶが,本稿では前者について述べる。
ヒスタミン受容体
著者: 福井裕行 , 和田博
ページ範囲:P.375 - P.379
「概説」
1.ヒスタミンH1-受容体とそれに作用する薬物
H1-受容体は平滑筋(血管,小腸,気道,子宮,輸精管,膀胱など),血管内皮細胞,副腎髄質,心臓,ある種の血球細胞,中枢神経系に存在し,平滑筋の収縮,終静脈の収縮による毛細血管の透過性亢進,血管内皮依存性弛緩因子の遊離,カテコラミン遊離などのH1-受容体を介した作用が知られる1-4)。ホスホリパーゼCと協調し,H1-受容体の刺激によりイノシトールリン酸の蓄積が起こり,細胞内のCa2+濃度の上昇が引き起こされる2,3)。H1-作動薬はヒスタミンの数%の効力しかなく,また,特異性もH1-拮抗薬に比べて低い4)。H1-拮抗薬は多数開発され,ethanolamine型,ethylenediamine型,alkylamine型,phenothiazine型,piperazine型およびその他に分類される4,5)。H1-受容体に対する親和性はヒスタミンに比べて1,000~10,000倍高い。H1-拮抗薬は種々のアレルギー性疾患(蕁麻疹,アレルギー性鼻炎,花粉症)の治療に用いられる。H1―拮抗薬の副作用として鎮静作用(眠気)がよく知られているが,非鎮静性H1-拮抗薬が多数開発されている6)。H1-受容体の標識には[3H]mepyramine(pyliramine)結合試験が用いられる7)。
ムスカリン受容体
著者: 芳賀達也 ,
ページ範囲:P.380 - P.385
「概説」
ムスカリン受容体の内在性活性物質はアセチルコリンで,典型的なアゴニストはムスカリン,アンタゴニストはアトロピンである。他のアセチルコリン受容体であるニコチン受容体とは,構造,機能,分布いずれもまったく異なる。ムスカリン受容体は副交感神経標的細胞,汗腺,血管,神経節,中枢神経系など生体に広く分布する。平滑筋の収縮または弛緩,唾液などの分泌亢進,伝達物質放出の促進あるいは抑制,シナプス後部の脱分極あるいは過分極など,器官の種類によって種々の反応を引き起こす。薬理学的性質からM1,M2,M3のサブタイプに細分類されており,それぞれに比較的特異なアンタゴニストとしてpirenzepine,AF-DX 116,hexahydrosiladifenidolなどがある。
ムスカリン受容体の分子種として5種が同定されており,m1,m2,m3,m4,m5と命名されている(研究グループによってmAChRⅠ,Ⅱ,Ⅲ,ⅣあるいはM1,2,4,3が使われたが,今後はm1-m5に統一されるものと思われる。m3がM4に,m4がM3に対応することに注意されたい)。いずれも細胞膜7回貫通構造を持つG蛋白質共役受容体である。受容体の主要な機能は,m1,m3,m5は百日咳毒素非感受性G蛋白質を介するホスホリパーゼCの活性化,m2とm4は百日咳毒素感受性G蛋白質を介するアデニル酸シクラーゼの阻害とK+チャネル開口である。
ニコチン受容体
著者: 紺野不器夫
ページ範囲:P.386 - P.390
「概説」
アセチルコリン(ACh)は神経伝達物質として最初に決定された物質であり,大別すると二つの性質の異なる受容体と相互作用を行うことが古くより知られていた。一つは中枢や副交感神経節後線維と心臓,平滑筋臓器および各種の分泌腺などの効果器の接合部にあるムスカリン様受容体であり,もう一つは本稿で述べる中枢や自律神経の神経節,副腎髄質および運動神経の神経筋接合部(終板)に存在するニコチン様受容体である。ニコチン様受容体はタバコ(Nicotina tabacum)のアルカロイドのニコチンを少量与えると構造変化を起こし,カチオンの透過性を増大して膜電位を変化させ,その結果興奮の伝達が生ずるという生理機能を有している。しかし,その薬理学的性質は存在部位で多少異なっており,興奮の伝達は神経節ではヘキサメトニウムやペントリニウムで遮断され,終板ではd-ツボクラリン(クラレ)やデカメトニウムによって遮断される。AChのニコチン様受容体は実体としての研究がもっとも早くから発展してきた。その理由として,受容体密度の高い発電魚の発電器官(系統発生学的に横紋筋と考えられている)などの実験材料にめぐまれたことや各種の生化学的,遺伝子工学的実験法が進歩してきたことが挙げられる1,2)。
オピオイド受容体
著者: 佐藤公道
ページ範囲:P.391 - P.394
「概説」
オピオイド受容体は,morphineなどの麻薬性鎮痛薬とその関連合成鎮痛薬およびオピオイドペプチド類が結合する受容体の総称である。この受容体については,古くから麻薬性鎮痛薬の構造活性相関研究の成果を基にモデルが提出されるなどしてきたが,1973年に放射活性の高いリガンド(3H-naloxoneなど)を立体特異性〔R(-)体のみ活性〕も考慮して結合実験に応用した結果,中枢および腸管神経でその存在が初めて確認された。その脳内分布は不均一で,大脳辺縁系に属する扁桃核,視床下部,視床内側部,尾状核頭部,中脳中心灰白質,脊髄後角などに多い。
シグマ(σ)受容体
著者: 藤田道也
ページ範囲:P.395 - P.397
「概説」
もとはオピオイド受容体の仲間に入れられていた本受容体は研究が進むにつれて独立した受容体と考えたほうがよいことが分かってきた。その大きな理由はμ,δ,κ受容体が共通してnaloxoneによってブロックされるのに,σ受容体だけがブロックされないからである1)。σ受容体(またはσ結合部位binding-site)という命名はMartinら2)が示唆した命名法(σは最初にこの受容体に対して用いられたSKF 10,047の頭文字を意味する)を踏襲している。
ヒトでσ受容体の密度がもっとも高いのは小脳,nucleus accumbens,大脳皮質などである。autopsyでえられたヒト小脳のσ受容体は単一タイプで,Kd=0.95±0.12nM, Bmax=358±13fmol/mgタンパク質である19)。
カンナビノイド受容体
著者: 大石了三
ページ範囲:P.398 - P.398
「概説」
マリファナの主成分⊿9-tetrahydrocannabinol(⊿9-THC)の作用機序として特異的受容体に対する作用であるという考えと吸入麻酔薬のように非特異的に膜に結合し膜構造を変化させるという考え方があった1)。しかし,いろいろなカンナビノイド化合物がadenylate cyclase活性を抑制し,その効果が鎮痛効果と相関し,立体特異性も認められること,さらにその作用がGiによって媒介されることが明らかとなり特異的受容体の存在が強く示唆されるようになった2)。
⊿9-THCをリガンドとした受容体結合実験は成功しなかったが,強力なカンナビノイド化合物CP-55,940をリガンドとして特異的な高親和性結合部位が明らかとなった。ラット大脳皮質P2 membraneに対する[3H]CP-55,940の特異的結合は飽和性を示し,Kd=133pM,Bmax=1.85pmole/mg・proteinである。GppNHpは[3H]CP-55,940結合の解離を促進する。また,この結合はNa+およびK+により減少し,Ca2+,Mg2+により増加する。
タキキニン受容体
著者: 鈴木秀典 , 大塚正徳
ページ範囲:P.399 - P.402
「概説」
1.タキキニン受容体
タキキニン受容体は現在NK1,NK2,NK3型の3種に分類され,内因性ペプチドであるsubstance P(SP),neurokinin A(NKA),neurokinin B(NKB)がそれぞれに対し高い親和性を持つ(表1)。近年,中西らのグループは,電気生理学を組み合わせた遺伝子クローニングの手法を用いて,これら3種の受容体の一次構造をすべて明らかにした1-3)。これによるとタキキニン受容体は7個の膜貫通領域を持ち,細胞外にあるN末側に糖付着部位,細胞内にあるC末側にリン酸結合部位となりうる多くのセリン,スレオニンを含んでいる。すなわちG蛋白共役型受容体ファミリーに属することがわかった。三つの受容体の間の相同性は高く,とくに膜貫通領域および膜近旁の細胞内部分がよく保存されている(54~66%)(図1)。
アフリカツメガエル卵母細胞に発現させたタキキニン受容体に対する内因性タキキニンのEC50を表1に示す。同様の効力順位がそれぞれの受容体を発現させた培養細胞を用いたリガンド結合試験でも得られている4)。
セロトニン受容体
著者: 西尾廣昭 , 仲田義啓 , 瀬川富朗
ページ範囲:P.403 - P.407
「概説」
1979年の終わりの,少なくとも1種類以上の中枢セロトニン(5-HT)結合部位が存在するという発見1)を契機に,この伝達物質についての研究は一挙に加速した。そして,結合部位選択的リガンドの同定の試み,これらの新しい試薬を用いて新たに発見された5-HT1および5-HT2部位の機能的意義を記述する試みへと引き続いた。それ以来,数種の5-HT結合部位のグループが報告されている。すなわち,5-HT1,5-HT2,5-HT3およびもっとも最近には5-HT4受容体が報告されている。5-HT1部位は以下のようにサブグループに分けられている。5-HT1A,5-HT1B,5-HT1C,5-HT1Dおよび5-HT1Eである。これらのうち,5-HT1E2)や5-HT43)部位のようなものは新しすぎて総説のレベルではまだ十分には論議されていない。
5-HT1および5-HT2結合部位が最初に特徴づけられた後に,それらの機能的関連性についての示唆があったが,新しい結合部位グループが引き続いて発見されたこと,とくに5-HT1結合部位の複数のグループの発見は,これらの部位の正確な役割を決定することを困難にしている。混乱をより大きくしているのは,選択性ということが研究上の一時的な現象に過ぎなかったという知見である。
Ⅱ.チャネルに作用する薬物
Caチャネル
著者: 河西春郎
ページ範囲:P.410 - P.413
「脊椎動物神経細胞のCaチャネルの種類」
Ca阻害剤という言葉はCaチャネルの阻害剤と言う意味で心筋平滑筋の研究において導入された1)。その代表例,ジヒドロピリジン誘導体は筋肉の主要なCaチャネルをほとんど完全に阻害する。しかし,神経のCaチャネルはジヒドロピリジン感受性以外にも種類があり,それらがむしろ主役なのでジヒドロピリジンの作用は弱い2,3)。脊椎動物神経細胞のCaチャネルは最低4群に分かれる(表1)。薬理的性質が異なることなどから,それらが別の分子であることは確実である。そのなかで,Ca流入路として重要なのは活性化に大きな脱分極の必要な高閾値(high voltage-activated)Caチャネルである。高閾値Caチャネルのなかには,ω-conotoxinGVIA(ωCgTX)によって不可逆的に阻害される群とジヒドロピリジン(DHP)誘導体で阻害される群,およびそのいずれでも阻害されない群がある。はじめの2種類の高閾値Caチャネルには動物種を通じて共通の生理的特徴があり(表1),また神経細胞の種類や部位での発現も異なり,その担う生理機能が違うことが考えられる2,3)。これら2種類のCaチャネルはいずれも強いCa依存性の不活性化を示し,不活性化を指標としてCaチャネル電流を分離同定することは困難である。
細胞内Ca放出チャネル:CaによるCa放出チャネル・IP3受容体チャネル
著者: 飯野正光
ページ範囲:P.414 - P.415
CaによるCa放出チャネル(CICRチャネル,ライァノジン受容体)
「概説」
この機構は骨格筋小胞体においてCa自身がCa放出(Ca-induced Ca release,CICR)を起こすことで最初に発見された1)。ライアノジンという植物アルカロイドをマーカーとして蛋白質が単離された2)ため,ライアノジン受容体と呼ばれることがある。cDNAクローンから一次構造が決定されており3),C端付近にチャネルを形成すると見られる膜貫通部が存在すると予想されている。分子量約56万の蛋白質で4量体としてチャネルを形成する。このCa放出機構の性質は分離筋小胞体標本やスキンドファイバーを用いて詳しく調べられた1)が,最近は人工膜に埋め込んで単一チャネルレベルの研究も可能になった4)。μM以上のCa2+によってこの機構は活性化され,ATPなどのアデニンヌクレオチドが促進作用を持つが,Mg2+とH+およびcalmodulinは抑制的に働く。
横紋筋では横管系と筋小胞体の接合部分に存在し,興奮収縮連関に関与すると考えられているが,その詳しい機構についてはまだ明らかにされていない。骨格筋と心筋のチャネルは高い相同性があるが別の蛋白である。平滑筋と神経細胞にも存在することが示されているが,横紋筋のチャネルとの異同については現在研究が進められているところである。
オープンチャネル
著者: 石田美知子 , 篠崎温彦
ページ範囲:P.416 - P.417
「概説」
ある種の局所麻酔薬が,シナプス電流の最大振幅をほとんど変えずにその減衰を速めるとか,あるいは初期の早い成分とそれに続く遅い成分の二つのcomponent(二相性)をもつようにするなど,競合的拮抗やいわゆる古典的な非競合的拮抗などの理論では説明できない現象1,2)が観察されるにおよび,いろいろな仮説が提唱された.最初,アセチルコリン受容体はNa+チャネルとK+チャネルを別々に持ち,プロカイン,リドカインなどの局所麻酔薬はこれらのチャネルに対して別々に作用する結果であるという仮説が提案されたが,実証することはできなかった。そこで登場したのが,オープンチャネルブロックの考え方である3)。これはアゴニストの作用によりイオンが通過するチャネルが開かれるが,いわば瓶の穴のコルク栓のように薬物分子自身によってチャネルが栓をされてしまうというものである。電気生理学的に観察される現象としては,アゴニストによる受容体の脱感作(desensitization)に良く似ている。この考え方はシナプスにおけるいろいろの薬物作用機作を説明するのに魅力的なモデルであり,いままで説明困難であった薬物の作用機序の多くがこのモデルにより説明可能になった。チャネルブロックは次式のように説明されている。
Cl-チャネル阻害剤
著者: 稲垣千代子
ページ範囲:P.418 - P.419
「概説」
神経系のCl-チャネルには,神経伝達物質の受容体刺激により作動するものの他,Ca2+依存性Cl-チャネル,電位依存性Cl-チャネルなどが知られている。これらのCl-チャネルに作用する薬物には促進剤と阻害剤があり,促進剤にはGABA,glycineなどの神経伝達物質とそのアゴニスト,およびベンゾジアゼピンやavermectin B1aなどのGABAA受容体・Cl-チャネル機能促進薬が含まれる。神経系のCl-チャネルに対する阻害剤は受容体・Cl-チャネル阻害剤とその他のCl-チャネル阻害剤に分けて考えることができる。GABAA受容体,glycine受容体およびacetylcholine(Molluscan,nicotinic type)受容体は,イオンチャネル内蔵型受容体としてCl-チャネルを構成しているので,GABA,glycincおよびacetylcholineのそれぞれの受容体への結合を阻害するビククリン,ストリキニーネおよびd-ツボクラリンは,受容体刺激によるCl-チャネルの開放を阻害するが,これらは一般には神経伝達物質の受容体拮抗薬として分類される。
K-チャネル
著者: 赤須崇 , 時政孝行
ページ範囲:P.420 - P.423
K-チャネルはNa-チャネルと並んでもっとも普遍的なイオンチャネルであるが,その多岐にわたる性質の違いから,現在少なくとも10種類に近い数に分類されており,それぞれのタイプにはさらにいくつかのサブタイプが存在する。これらのK-チャネルの薬理学的性質の同定には,天然毒素の発見や合成阻害剤および活性化剤の開発によるところが大である。これに加えて,近年の研究方法の著しい発展は単一イオンチャネル電流の測定を可能とし,その結果,電気生理学的性質の面からもK-チャネルの多様性を論じることが可能になってきた1,2)。
最近のK-チャネルについての話題の一つは,伝達物質によるチャネルの制御と,受容体とチャネルの間にあって情報伝達(シグナル・トランスダクション)を行う種々の細胞内(もしくは膜内)の代謝過程の関わり合いであろう。とくに,GTP結合蛋白を介したアデニレートサイクレースやイノシトールリン酸代謝が,K-チャネルを制御する機構の一つとして注目されている3)。ここでは主に神経のK-チャネルに直接作用する薬物に焦点をあてて,最近の研究成果を紹介するとともに,伝達物質の作用についても最近の知見をまとめてみたい。
Naチャネル:賦活剤・阻止剤
著者: 瀬山一正
ページ範囲:P.424 - P.426
賦活剤
「概説」
膜電位依存性Naチャネルに特異的結合をして静止膜電位でNaチャネルを開放状態にする生物毒が異なる植物・動物から4種発見されている。Aconitineはキンポウゲ科のトリカブト類から,Grayanotoxin(GTX)はツツジ科のハナヒリノキから,Veratridineはユリ科のバイケイ草から,最後にBatrachotoxin(BTX)は中南米産の矢毒ガエルの皮膚からおのおの抽出される。共通に認められる薬理作用としてNaチャネルの活性化ゲートの膜電位依存性を変え過分極状態からNaチャネルを開放することである。これらの生物毒はNaチャネルの膜電位変化を感知する部位に結合しているか,その機能に深く関連している場所に結合しているので,チャネル蛋白の構造-機能相関を調べる際の有力な薬理学的道具となりうるであろう。
Ⅲ.代謝的に作用する薬物 トランスミッターの放出・取り込みに作用する薬物
アセチルコリン
著者: 前野巍
ページ範囲:P.428 - P.430
「概説」
コリン作動性神経の伝達物質であるアセチルコリン(ACh)は高親和性コリン取り込み機構1,2)で神経終末内に取り込まれたコリンとアセチルCoA3)を基質として合成される。この合成に関与する酵素はコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT:EC 2・3・1・6)である4)。コリンは高親和性コリン取り込みとACh合成反応の基質であり,合成されたAChは次に述べるシナプス小胞(SV)のACh取り込み機構の基質となるから,分子構造がコリンに類似した薬物は基質あるいは阻害剤としてそれぞれの機構に異なった作用を示すことになる。またアセチル化されたコリン誘導体は,偽伝達物質(pseudotransmitter)となってシナプス伝達を阻害する可能性がある。
神経終末内部に多数存在するシナプス小胞(SV)にはACh取り込み機構5)があって,合成されたAChはSV内に備蓄される。AChを含有するSVの大部分は放出に利用できない貯蔵型(stored vesicles)であり,放出に際しては動員(mobilization)6)と呼ばれる活性化過程を経て活性型(availableまたはreleasable vesicles)に転換されなければならない。この動員現象は神経終末部の活性帯(active zone)へSVが移動し,神経膜と接着するまでの一連の過程を示すと思われるが,その実態はまだ十分に解明されていない。
興奮性アミノ酸(グルタミン酸を除く)
著者: 小野寺加代子
ページ範囲:P.431 - P.433
「概説」
興奮性アミノ酸レセプターに作用するendogenous(内因性)の神経伝達物質はグルタミン酸と考えられているが,未だ確定されたわけではなく,もっとも有力な候補の一つである。アスパラギン酸も伝達物質のcriteria,存在,作用,放出,取り込みなど,すべてにグルタミン酸と同様に当てはまり,どちらが真の伝達物質かを決定するのはかなり難しい問題である1,23)。アミノ酸レセプターのサブタイプのうちNMDAレセプターに作用する内因性のアゴニスト(神経伝達物質)については,グルタミン酸やアスパラギン酸では説明しにくい点がいくつかあることが指摘されている14)。そこで,グルタミン酸,アスパラギン酸のほかに,Quinolinate(QUIN)4)やL-Homocysteate(L-HCA)5)など含硫アミノ酸6),dipeptideのN-acetyl-aspartyl-glutamate(NAAG)7,8)などが伝達物質の候補に上げられる(表1)。
内因性または外因性のアミノ酸は,分解酵素がそこに存在している証拠がないので,除去は取り込みによってなされると考えられている。
ガンマ・アミノ酪酸(GABA)
著者: 鈴木秀典 , 大塚正徳
ページ範囲:P.435 - P.436
「概説」
ガンマ・アミノ酪酸(γ-aminobutyric acid,GABA)は哺乳類中枢神経系において主要な抑制性伝達物質の一つである1)。シナプス間隙に放出されたGABAは再びニューロンに取り込まれ,これが神経伝達作用の終止に関与していると考えられている2)。この取り込み機構(トランスポーター)には親和性の異なる2~3種類が共存し3),このうちで神経伝達作用の終止に関与するのは主として高親和性の取り込みである2)。一方,グリア細胞にも高親和性の取り込み機構が存在するがその役割は不明である2)。
ニューロンとグリア細胞上の取り込み機構は薬理学的に異なる性質を持っている。すなわちニューロンとグリア細胞においてGABAの取り込み阻害物質は,異なるKi(またはIC50)を示す(表1・次頁)。
アラキドン酸
著者: 清水孝雄
ページ範囲:P.437 - P.438
「概説」
アラキドン酸は細胞膜の構成成分である。通常,膜のリン脂質(グリセロリン脂質)のグリセロール骨格の第二位にエステル結合しており,細胞に刺激が加わるとホスホリパーゼA2の働きで遊離する。アラキドン酸を高濃度に含むリン脂質としてはホスホイノシチド,PAF前駆体リン脂質がある。したがって,PI代謝回転やPAF生合成とアラキドン酸生成はカップルしていることが多い。アラキドン酸からはプロスタグランディン,ロイコトリエンなどの生理活性物質が作られる1)。ロイコトリエン関連物質は最近神経伝達やチャネル修飾に重要な役割を果たしていると考えられている2,3)。また,アラキドン酸そのものが神経伝達を修飾するとの報告もある4)。
アラキドン酸代謝物が軟体動物性テトラペプチド(FMRF amide)の細胞内セカンドメッセンジャーとして,ポタシウムチャネルの開口に関与するという報告はKandelのグループから,アメフラシ感覚ニューロンを用いた実験で初めて報告された。肝心のS-チャネルがまだクローニングされておらず,その作用機作は未だに明らかとはなっていないが,これが一つのきっかけとなって,同様の報告が多く発表された。心房細胞で,ロイコトリエンC4がアセチルコリン性のポタシウムチャネルを開くこと,また,ソマトスタチンにより,線条体のM-電流が促進すること,また海馬でもアラキドン酸代謝物によるポタシウムコンダクタンスの上昇などが報告された。
トランスミッター/非特異的
著者: 長谷川宏幸
ページ範囲:P.439 - P.440
「概説」
トランスミッターの放出と取り込みを非特異的に賦活すると思われてきた薬物は多様な標的に,あるいは促進的に,また別の標的に対しては抑制的にそれぞれ広範囲な効果を示す。しかし,今日,トランスミッターの放出および取り込みの機構が解明されてくるにしたがって,その多くは効果が広範囲であり,多様である理由が類推できるようになってきた。放出(開口放出)は一般に,顆粒の細胞(シナプス)表面への移動と膜の融合という過程からなっており,細胞内における顆粒の物理的な移動には細胞骨格系と運動タンパク質の相互作用がある。この運動タンパク質系は細胞質カルシウム濃度によって直接的間接的に調節される。この細胞質カルシウム濃度はまた,カルシウムチャネルによって調節され,これは多くの場合細胞内カリウム濃度と密接な関係にある。もとより細胞内カリウム濃度はNa/K-ATPase系を駆動力とし,複数のカリウムチャネルによって調節されている。能動輸送を伴う過程は必然的にATPの産生系に依存する。これらの過程はいずれも細胞間情報伝達系にきわめて一般的であるがゆえに,これらのいずれに作用する薬剤もきわめて多様な標的に対して効果を現すことになる。むしろ,これらに作用する薬剤がそれでもいくつかの数えられる程度の標的についてのみ効果を現すとすればその際の制限要因の方が興味深いとさえいえよう。
ノルアドレナリン
著者: 高柳一成 , 佐藤光利
ページ範囲:P.441 - P.444
「概説」
アドレナリン作動性神経は他の神経同様,興奮を伝達するために神経の脱分極によりCa2+が神経細胞内へ流入し,これによってノルアドレナリン(NA)が遊離される。NAの放出量は電位依存性のL型Ca2+チャネルを通って流入したCa2+量に依存している。また,NA遊離機構はαおよびβアドレノセプター(アドレナリン受容体)さらにアデノシン受容体あるいは細胞内サイクリックAMP(cAMP)などのセカンドメッセンジャーによって制御されている。
一方,アドレナリン作動性神経の興奮によって放出されたNAは,モノアミンオキシダーゼ(MAO)やカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)によって代謝を受けるかあるいはアドレナリン神経に再度取り込まれるかして不活性化される。このNAの取り込みにはエネルギーとしてATPが必要でNa+に感受性であることからキャリアの存在が示唆され,キャリア説が支持されている1)。最近,ヒトNAトランスポーター蛋白のアミノ酸配列がR. D. Blakelyらにより解明された2)。
ドーパミン放出:賦活剤・取り込み:阻害剤
著者: 直井信 , 永津俊治
ページ範囲:P.445 - P.446
ドーパミン放出:賦活剤
「概説」
ドーパミン(DA)の放出機構には細胞外のCa2+に依存する系とCa2+に影響されない系がある。Ca2+に依存する系はDAをexocytosisにより細胞外に放出する。この系は神経細胞のアミン輸送体に対する阻害剤によって影響されない。他のCa2+に存在しない系はアミン輸送機構の阻害剤であるcocaineやdespramineにより阻害される。このためこの放出はアミン運搬機構が細胞外に向けて作用していると考えられる。この系は“carrier-mediated efflux”または“outward transport”とも呼ばれる。
セロトニン
著者: 山本経之
ページ範囲:P.447 - P.448
「概説」
セロトニン(5-HT)の脳における存在は,Twarog & Pageによって明らかにされた。この発見を契機に脳内における神経伝達物質としてのセロトニンの生理的役割およびその欠損に伴う病態が明らかにされてきた。一般に,伝達物質は神経インパルスに応じて神経終末部から遊離されたのち,一部は受容体に作用するが,他の大部分(約80%)は再び終末部に取り込まれる。この機構を再取り込み機構といい,伝達物質の不活性化に酵素的分解以上の役割を演じている1)。これは能動輸送形態をとり,代謝過程を調節する重要な機構である1)。ラットの脳シナプトソームを用いて測定した[3H]5-HTの取り込みのKm(親和性)およびVmax(密度)値は,いずれも辺縁系-線条体が大脳皮質,間脳および下位脳幹のそれよりも高い。
本項ではセロトニンの神経終末部での遊離および取り込み機構に影響をおよぼす薬物をあげ概説した。
サブスタンスP
著者: 鈴木秀典 , 大塚正徳
ページ範囲:P.449 - P.449
Substance P(SP)は脊髄後角に終止する一次求心性線維の一部(約10~20%,主として無髄のC線維)に含まれており1),刺激に応じて神経終末から放出され2),脊髄ニューロンに興奮性効果を引き起こす3)。これらの事実からSPは一次求心性線維の伝達物質の一つと考えられ,疼痛伝達に関与すると推定されている。
一方,トウガラシの成分であるcapsaicinは無髄の一次求心性線維(C線維)に選択的に作用することが知られている4)。このことからcapsaicinが一次求心性線維に含まれるSPの動態に影響を与えることが予想され,実際以下のような実験事実が得られた。
酵素活性に影響する薬物
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(抗コリンエステラーゼ剤)
著者: 藤田道也
ページ範囲:P.450 - P.451
「概説」
アセチルコリンエステラーゼ(AChE)の可逆的阻害剤として古典的に有名なのはphysostigmineとneostigmineである。両者に共通しているのはカルバモイル結合(>N-C:O-)であり,両者はAChEによって加水分解を受ける。また,両者は四級アミンをふくんでいるので血液・脳関門を通過することができないことが予想されるが,neostigmineと違ってphysostigmineは血液・脳関門を通過する。神経・筋接合部と眼球に対して用いられる。
有機リン剤はアセチルコリンエステラーゼの特異的不可逆阻害剤である。阻害の結果コリン作動系の活性が亢進することが中毒の原因だと伝統的に考えられているが,ドーパミン作動系,GABA作動系,セロトニン作動系の関与も否定できない(soman,THAの項参照)。中枢に働く有機リン剤のうちDFP,sarin,soman(各論参照)はフッ素をふくむphosphofluoridateの誘導体であり,tabunは代わりにCN基をふくむphosphoramidocyanidateの誘導体である。可逆的阻害剤(例:physostigmine)で前処理すると有機リン性不可逆阻害剤の作用を種々の程度に防止することができる。
アデニル酸シクラーゼ
著者: 夏苅直己
ページ範囲:P.452 - P.456
「概説」
1.基本構造と活性制御機構
アデニル酸シクラーゼは細胞膜結合性の酵素で,基本的にホルモンや神経伝達物質など一次伝達物質の受容体(R),GTP結合蛋白質(G),これらに共役したカタリスト(C)から構成される(図1)。この酵素の活性化によってアデノシン三リン酸(ATP)は環状アデノシン一リン酸(cAMP)に変換され,cAMPは二次伝達物質としてcAMP依存性リン酸化酵素(A-kinase)を活性化する。このリン酸化により細胞内の様々な代謝活動が発現される。
RとGには促進性(Rs,Gs)と抑制性(Ri,Gi)成分があり,一次伝達物質刺激によるcAMPの生成をそれぞれ促進したり抑制したりする。Gはαβγの三量体から成る。脳には特異的にGoが存在する。αにも促進性αs(45/52kDa)と,抑制性αi(41 kDa)/αoがある。通常αにはグアニンヌクレオチドであるGDPが結合している(①)。β(35kDa),γ(5~10kDa)は,両方の系に共通である。RにアゴニストAが結合するとA-R-G複合体が形成されα上でGDP-GTP交換反応が行われる(②:律速段階)。この反応にMg2+は必須である。三量体形成時のRはAに対して高親和性の状態にある(R*)。GTPが結合するとαは活性化されβγとともにRから解離する。この時Rは低親和性状態(R)に戻る。αs-GTP,αi-GTPはそれぞれ酵素を活性化あるいは抑制する。
グアニル酸シクラーゼ
著者: 中根正樹
ページ範囲:P.457 - P.459
「概説」
グアニル酸シクラーゼ(EC 4.6.1.2.)はMgまたはMnの存在下でGTPからサイクリックGMP(cGMP)を産生する反応を触媒する酵素である。中枢神経系をはじめ,多くの組織において可溶性と膜結合性の両方にその活性が見出され,両者は異なる構造と機能をもった酵素である。両者とも最近組織によって異なるサブタイプがあることが明らかになっている。可溶性グアニル酸シクラーゼは82kDaと70kDaの二つの異なるサブユニットから成り,それぞれのサブユニットがC末端にグアニル酸シクラーゼの触媒部位をもつが,両サブユニットがヘテロダイマーを形成して初めて活性を発現する。N末端部位には調節部位としてのヘム結合活性を持つ。
それに対し,膜結合性グアニル酸シクラーゼはシングルポリペプチドで,ただ一カ所の膜貫通部分をもち,細胞外にペプチド受容体部位を,細胞内にグアニル酸シクラーゼ活性部位を,そして膜貫通部位の細胞質側にATP結合部位を持っている(図1)。
NO合成酵素
著者: 岡田大助
ページ範囲:P.460 - P.461
「概説」
L-arginineを基質とし,一酸化窒素(nitric oxide,NO)とL-citrullineとを生成する酵素である。活性にCa2+を絶対的に要求する神経-内皮型と,Ca2+またはMg2+を要求するmacrophage型のアイソザイムが知られている1)。前者はラットの小脳18個から,DEAEカラムおよび2',5'-ADP-agaroseカラムを用いて6千倍に精製され,9μgの酵素が得られている2)。SDS-PAGE上で分子量15万に相当する単一バンドを示す。NADPHおよびCa-calmodulinを活性に要求する。基質(L-arginine)に対するKmは1.5μMであり,Caおよびcalmodulinに対するEC50はそれぞれ200nMと10nMであった。ポリクローン抗体を用いた免疫組織化学的研究によると,中枢神経系では小脳,主,副嗅球,歯状回,上丘,下丘にこの酵素が多く認められた3)。
プロテインホスファターゼ阻害剤
著者: 高井章
ページ範囲:P.462 - P.463
オカダ酸(okadaic acid)
「概説」
C38脂肪酸のポリエーテル誘導体1)で,蛋白質セリン/スレオニン残基の脱リン酸化酵素(プロテインホスファターゼ)のうち2A型および1型(下記)に対し,強力かつ特異的な阻害作用を示す2,3)。物質名は,はじめ本邦太平洋岸に普通にみられる海綿の一種Halichondria okadai(クロイソカイメン)から抽出されたことにちなむが,実は,ある種の渦鞭毛藻類により合成され,それらを捕食する海綿や貝類など,他の海産生物に蓄積するらしい4)。
当初,平滑筋張力増強作用の検討から,プロテインホスファターゼ阻害剤であることが示されて以来5,6),心筋Ca2+チャネル2)や平滑筋Ca2+依存性K+チャネル7)などを含め,蛋白質リン酸化により調節を受ける各種の系の研究に広く使用されるようになっており,総説がある8-10)。
エンケファリナーゼ阻害薬
著者: 佐藤公道
ページ範囲:P.464 - P.465
「概説」
オピオイド受容体の内因性活性物質として最初に発見された2種のペンタペプチド,メチオニン-およびロイシン-エンケファリンは生体内の諸組織においてきわめて迅速に代謝・不活性化される。この代謝に関与する酵素として,図1に示すような数種の酵素が知られている1)。エンケファリンからTyr-Gly-Glyを切り出すエンケファリナーゼは,脳組織から見出された膜結合性の亜鉛含有中性メタロエンドペプチダーゼの一種であるが,ウサギ腎膜画分から見出されていた類似の性質を持つ酵素EC 3.4.24.11と同一であることが明らかにされた2)。本酵素の基質特異性は比較的高く,ダイノルフィン類やβ-エンドルフィンなどは基質にならないが,心房性ナトリウム利尿ペプチド,サブスタンスPはin vitroではかなり良い基質である。
最近,ラット・ウサギ・ヒトのエンケファリナーゼ分子のクローニングが行われ,742残基アミノ酸の一次構造が明らかにされた。それによると一つの膜貫通ドメインと六つの糖鎖結合部位を持ち,分子の大部分が細胞外に存在するエクトペプチダーゼ(ectopeptidase)である。
トランスアミナーゼ阻害薬
著者: 藤田道也
ページ範囲:P.466 - P.467
「概説」
脳のトランスアミナーゼの阻害剤に関する研究でもっとも進んでいるのは,1.GABA transaminase(略号:GABA-T)〔正確にはGABA-α-ketoglutarate aminotransferaseあるいは4-aminobutyrate:2-oxoglutarate aminotransferase(E. C. 2.6.1.19)〕のものである。Km(GABA)=2.2±0.24mM,Km(2-oxoglutarate)=0.22±0.11mM(ヒツジ脳)1)。他に,2.aspartate aminotransferase〔従来glutamate-oxaloacetate transaminaseと呼ばれていたもの〕の阻害剤(aminooxyacetic acid,略号:AOAA),3.ornithine transaminase〔L-ornithine:2-oxoacid aminotransferase,略号:OAT〕の阻害剤(L-canaline,vigabatrin),4.kynurenine transaminaseの阻害剤(AOAA)がある。阻害剤は特定の酵素に特異的ではあるが,一部重複もある(表1参照)。
プロテインキナーゼ
著者: 宮本英七
ページ範囲:P.468 - P.471
「概説」
蛋白質リン酸化反応は,蛋白質修飾の1種である。数十種にのぼる基質蛋白質がリン酸化-脱リン酸化反応によって制御されている。これらの蛋白質の中には,酵素,イオンチャネル,受容体などの機能蛋白質,微小管蛋白質などの細胞骨格蛋白質のような構造蛋白質が含まれている。それぞれの基質蛋白質のリン酸化反応によって,多岐にわたる細胞機能が調節されている。リン酸化反応を触媒する酵素はプロテインキナーゼであり,数十種にのぼる1)。細胞刺激に伴って細胞内に産生されるセカンドメッセンジャーによって活性化されるプロテインキナーゼ,基質蛋白質の名を冠して命名されている酵素があり,セリン,スレオニン残基をリン酸化する。一方,チロシン残基をリン酸化するプロテインキナーゼとして,細胞増殖因子受容体,原がん遺伝子,がん遺伝子の産物,広く組織に分布している酵素などがある。プロテインキナーゼ活性化薬および阻害薬2)を用いることにより,それぞれのプロテインキナーゼの関与する細胞機能を特定することができる。逆に,ある一定の細胞機能に,いずれのプロテインキナーゼが関与しているかを調べることができる。
チロシンヒドロキシラーゼ(TH)
著者: 長谷川宏幸
ページ範囲:P.472 - P.472
「概説」
チロシンヒドロキシラーゼによるチロシンの水酸化反応のステップはドーパミン,ノルアドレナリン,アドレナリンの生合成の第一段階であり,かつ律速段階であると認められている。本酵素は酵素的リン酸化による活性化や,生成産物(ノルアドレナリンなど)によるフィードバック阻害をうけるなど典型的な調節酵素である。その局在部位はカテコールアミン産生細胞とそれに由来する神経終末であることから,カテコールアミン産生細胞に対する特異的神経毒である6-hydroxydopamine(6HDA)は結果的にチロシンヒドロキシラーゼを低下させる。チロシンヒドロキシラーゼの部分精製標品を用いた最初の包括的な報告1)の中ですでにもっとも強力な阻害剤としてα-methyltyrosineが登場する。酵素に対するin vitroの阻害剤がそのままin vivo投与で有効であるとは限らないが,このα-methyl-p-tyrosineについてはすぐにそのin vivoにおけるカテコールアミン合成のブロックに有効であることが示され2),それ以来28年を経た今日でももっとも広範に用いられている。
ドーパミン-β-ヒドロキシラーゼ(DBH)
著者: 長谷川宏幸
ページ範囲:P.473 - P.473
「概説」
本酵素はドーパミンからノルアドレナリンへの転換を触媒する。したがって,本酵素の活性を阻害することによって,ドーパミン生成を直接押さえることなしにノルアドレナリンおよびアドレナリンの生成を押さえることができる。DBHはクロマフィン顆粒の膜内面に膜結合型が,顆粒内部に可溶型が存在し,この可溶型酵素はトランスミッター放出に伴って放出される。したがって,血流中の本酵素活性はアドレナリン放出の指標となる。本酵素は銅を補欠因子とし,別の還元剤(生体内ではアスコルビン酸)を助酵素として要求する酸素添加酵素である。銅イオンに対するキレーターは酵素活性を押さえることができるが,in vivo投与では特異性が広すぎて実用にならない。
DOPAデカルボキシラーゼ
著者: 大石了三
ページ範囲:P.474 - P.474
「概説」
=芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ,5-ヒドロキシトリプトファンデカルボキシラーゼ,EC 4.1.1.28。
芳香族L-アミノ酸のDOPAや5-ヒドロキシトリプトファン(5-HTP)を基質として脱炭酸によりドーパミンやセロトニンを生成する酵素である。ブタ腎より精製されたものは分子量112,000で1分子中に約1個のピリドキサルリン酸を含む。いろいろな芳香族L-アミノ酸を基質とするが,とくにDOPA(Km=0.19mM)と5-HTP(Km=0.1mM)に親和性が高く,フェニルアラニン,トリプトファン,チロシンには親和性が低い(Km値はそれぞれ42,10,8.4mM)。しかし,DOPAに対するVmax値は他のアミノ酸に比べて10倍以上高い。至適pHはアルカリ側にあるが,DOPAおよびドーパミンは不安定なため至適pHは7である1)。
ヒスチジンデカルボキシラーゼ
著者: 大石了三
ページ範囲:P.475 - P.476
「概説」
EC 4.1.1.22。
ヒスチジンからヒスタミンを合成する酵素で,微生物から植物,動物組織にいたるまで広く分布する。基質特異性が非常に高い。ピリドキサルリン酸(PLP)を補酵素として含むが,微生物の酵素の中にはピルビン酸が補酵素として働き,PLPを必要としないものがある。いろいろな組織から精製されたヒスチジンデカルボキシラーゼはヒスチジン濃度が上昇すると至適pHが酸性に移動し(pH7.2→6.6),それに伴ってKmおよびVmax値は上昇する1)。
ラット胎児肝から精製されたものは分子量54,000サブユニットのdimerである2)。クローニングされたヒスチジンデカルボキシラーゼ遺伝子がコードするタンパク質は655個のアミノ酸残基からなり,分子量73,450である。これは翻訳後プロセッシングを受けてヒスチジンデカルボキシラーゼサブユニットになるものと考えられる3)。
ホスホポジエステラーゼ
著者: 宮本英七
ページ範囲:P.477 - P.479
「概説」
cyclic nucleotide phosphodiesterase(PDE)は,cAMP発見間もない,今から30年前に見出された。PDEは,cAMP,cGMPの分解酵素として,細胞機能に重要な役割を演じている。合成酵素であるアデニル酸シクラーゼ,グアニル酸シクラーゼの作用によって,増加したcAMP,cGMPの組織での蓄積を起こし,その作用を増強し,持続させる。その後の研究の進展により,5種のアイソエンザイムが確認されている1)(表1)。それぞれの酵素は,さらにサブクラスがあり,組織分布が異なっている。
Ⅰ型(Ca2+-CaM-dependent PDE)はcAMP,cGMPを加水分解する。サブユニットの分子サイズが,脳,肺,平滑筋などで異なっている。Ca2+/CaMによって活性化される酵素である。Ⅱ型(cGMP-stimulated PDE)は,cAMP分解に対してcGMPが刺激効果を持ち,cAMP,cGMPの両方を分解する。Ⅲ型(cGMP-inhibited PDE)は,cAMP,cGMPの両方を分解し,cAMPの分解はcGMPによって阻害される。Ⅳ型(cAMP-specific PDE)は,cAMPを選択的に基質として利用する。
ホスホリパーゼC
著者: 中西理 , 竹縄忠臣
ページ範囲:P.480 - P.482
「概説」
1988年イノシトールリン脂質特異的ホスホリパーゼC(以下略してPLC)のcDNAクローニング成功以来,PLCについての理解は,急速に深まり,アイソザイムの構造と機能分担,さらには新たな活性制御機構の存在などが次々と明らかになってきた1)。
表1にPLCアイソザイムの分類と,共役の判明している受容体をまとめた。未だ受容体との関連がはっきりとしていないアイソザイムの多いなかで,特筆に値するのはPLC-γタイプであろう。このタイプだけが構造中にSH(src homology)-2領域を有し,チロシンキナーゼによりリン酸化を受け活性化することが明らかとなっている。現在SH-2領域はリン酸化チロシンを認識する構造であることが判明している。そしてチロシンキナーゼ活性を有する増殖因子受容体は,リガンドとの結合で自己リン酸化を行うことにより,SH-2領域を持つ蛋白たちを集め,細胞内情報のやりとりをしているという,新たな情報伝達のメカニズムが明らかになりつつある2)。
モノアミンオキシダーゼ阻害剤:モノアミンオキシダーゼA・モノアミンオキシダーゼB
著者: 江頭亨
ページ範囲:P.483 - P.487
「概説」
モノアミンオキシダーゼ(MAO)の阻害剤としてhydrazine系の薬物はあまりにも有名であるが,その後cyclopropylamine系,acetylenic系,Allylamine系へと発展してきた。とくに,acetylenic系のMAO阻害剤として,JohnstonがclorgylineをA型MAO阻害剤,Knollが(-) deprenylをB型MAO阻害剤と報告して以来,MAOの複数性(A,B説)の検討や選択的なA,B型MAOの阻害剤の開発が進んだ。
MAO阻害剤の阻害強度の比較として,一般的にKi値やIC50値が表記されているが,MAO活性はその測定条件で相違するので,ただ単にKi値やIC50値のみで比較するのは危険で,とくに,A型MAOやB型MAOの阻害剤については十分な注意が必要である。
プロテアーゼ
著者: 川島誠一
ページ範囲:P.488 - P.490
「概説」
プロテアーゼはタンパク質のペプチド結合を加水分解的に切断する酵素である。基質特異性・活性中心・切断様式・生体内局在などにより分類される種々のプロテアーゼが存在する。また,単にタンパク質を分解する代謝的機能を有するのみでなく,種々の活性タンパク質を切断してその機能を調節するモジュレーターでもある1)。さらに,基質側のタンパク質も数多く存在するため,実際に生体内でどのプロテアーゼがどのタンパク質を基質として切断しどのような変化を細胞にもたらしているかを結論することは,非常に困難である。このような場合,各プロテアーゼに特異的な阻害剤は有力な武器となる。
生体内には,プロテアーゼの暴走を防ぐため,内在性阻害タンパク質(プロテアーゼインヒビター)が共存する2)。しかし,その高分子性のため,実験系への応用は限られている。そこで種々の低分子プロテアーゼ阻害剤が開発されてきた。現在も,より特異性の高い阻害剤を求めて研究が行われている段階であるが,表1に現在知られている代表的なプロテアーゼ阻害剤につきまとめた3)。プロテアーゼは,その活性中心アミノ酸残基により,セリンプロテアーゼ・システインプロテアーゼ・アスパルチックプロテアーゼ・メタロプロテアーゼに分類される。したがって,これらの活性中心との反応性がプロテアーゼ阻害剤の特異性および阻害の強さと関係してくる。
ピリドキサルキナーゼ阻害剤・活性化剤
著者: 藤田道也
ページ範囲:P.491 - P.491
「概説」
ピリドキサルリン酸pyridoxal phosphateは一般にトランスアミナーゼの補酵素である。他に,グルタミン酸デカルボキシラーゼにも必要であるが,スルホトランスフェラーゼには阻害剤として働く。ピリドキサルをリン酸化してピリドキサルリン酸を作るのが酵素ピリドキサルキナーゼの働きである。ピリドキサルキナーゼを阻害するmethylxanthineは本来アデノシン受容体のアンタゴニストである。
亜鉛はピリドキサルキナーゼ活性を促進するが,海馬には亜鉛が高濃度に含まれている。海馬の中でもhilusにもっとも高く,fimbriaでもっとも低い。mossy fiberではその濃度は300~350μMに達する。ピリドキサルリン酸と亜鉛の欠乏ないし過剰はてんかん様のけいれんを惹き起こし,GABAによって阻止される。海馬は外来神経毒の標的であるが,高濃度の遊離亜鉛は海馬に対する内因性神経毒だと言える。高濃度の遊離亜鉛はピリドキサルリン酸の酵素タンパクへの結合を妨げることによって,グルタミン酸デカルボキシラーゼ活性を阻害する。亜鉛は海馬でメタロチオネイン様のタンパクに結合しているらしい1)。
Na, K-ATPase
著者: 太田英彦
ページ範囲:P.492 - P.493
「概説」
Na,K-ATPase1)は,塩基配列や反応機構の近縁性から筋小胞体のCa-ATPaseや胃の壁細胞のH,K-ATPaseとならんで,E1-E2型ないしはP型ATPaseとして分類される。一価陽イオンの能動輸送ポンプである。このATPaseは1957年に,Na,Kイオンの共存を必要とするATPaseとして発見され,以後赤血球膜の能動輸送機構との関連などが定量的に調べられ,ATP 1分子の加水分解当りNaイオン3コ,Kイオン2コを輸送することが明らかになった。その研究過程で,ウワバインをはじめとする強心配糖体はATPase活性とイオン輸送活性の双方を阻害する特異的な試薬として活用され,この酵素1分子当り1分子が結合することが分かっている2,3)。
この酵素は高等動物の脳,腎臓,心臓,小腸などのほか,サメの直腸腺,アヒルの塩腺,電気ウナギやシビレエイの発電器官などの細胞膜に多いが,赤血球を含めあらゆる細胞の細胞膜に存在する。通常の上皮細胞では管腔側でなく側底膜に局在するが,脳室の脈絡叢や網膜の色素上皮細胞では管腔側に見出される。このような極性分布はankyrin,fodrinなど膜骨格系との相互作用に基づくとされている。
代謝回転に作用する薬物
ノルアドレナリン減少剤
著者: 高柳一成 , 佐藤光利
ページ範囲:P.494 - P.495
「概説」
Guanethidine,reserpine,6-hydroxydopamine(6-OHDA)およびDSP-4は,受容体を遮断することにより作用を発現する拮抗薬とは異なり,ノルアドレナリン(NA)神経終末におけるNAの貯蔵部位への取り込みおよび生合成を阻害,あるいは偽伝達物質として取り込まれNAと置換することなどによりNA神経終末内のNAを枯渇させ,神経遮断作用を現す。臨床的には,guanethidineおよびreserpineがおのおの血圧降下薬およびトランキライザーとして用いられている。これらの薬物は,それぞれの薬理,生理作用の違いから実験上有用なNA減少剤として多く用いられている。
GABA増加剤
著者: 栗山欣弥 , 中安博司
ページ範囲:P.496 - P.497
「概説」
脳内GABA濃度には部位差があり,グラム組織当り10~0.3μmoleと,30倍程度の差異がある。GABAの含量はその生合成系と分解系の酵素群により支配されている。
グルタミン酸減少剤
著者: 栗山欣弥 , 中安博司
ページ範囲:P.498 - P.498
グルタミン酸は通常,脳内にもっとも多量に存在するアミノ酸である。このグルタミン酸は血液―脳関門を通過し難いため,その大部分は脳内で生合成されると考えられている。グルタミン酸のような代謝回路の中心に位置する物質は多種多様な制御を受けており,その代謝調節は複雑であるが,神経伝達物質としての代謝に限定すると,この事情をかなり単純化できる。
神経終末から遊離されたグルタミン酸は,シナプス前膜のほか,グリア細胞へも再取り込みされる。ここでグリアのみに局在するグルタミン合成酵素でグルタミンに変換された後,再び神経終末に輸送され,グルタミナーゼの作用によりグルタミン酸に再生される。このグルタミン酸―グルタミン回路はニューロンとグリアの代謝的相関という意味からも,重要視されている(図1)1)。一方,TCA回路を経由するグルコース由来のde novo回路も合成系の重要な部分となっている。
グルタミン酸減少剤:ケトジカルボン酸担体阻害剤
著者: 藤田道也
ページ範囲:P.499 - P.499
「概説」
グルタミン酸,アスパラギン酸の脱アミノ産物であるα-ケト(=2-オキソ)グルタル酸,ナキザロ酢酸はケト(=オキソ)基をもつジカルボン酸(カルボキシル基2個をもつ酸)である。グルタミン酸はミトコンドリア膜間スペースでグルタミンからリン酸活性化グルタミナーゼの作用で生じ,次に内膜をこえてマトリクス中に入り,そこでアミノ基を失ってα-ケトグルタル酸になる。後者はケトジカルボン酸担体2)を介してサイトソルに出,アミノ基転移を受けてグルタミン酸になる1)。もし,ケトジカルボン酸担体を競り合う物質(競合阻害剤)または別の形式の阻害剤が存在すると,α-ケトグルタル酸はミトコンドリア外に出られず,したがってグルタミン酸にも転化しないことになる。
ヒスタミン代謝回転作用薬
著者: 長谷川宏幸
ページ範囲:P.500 - P.501
「概説」
ヒスタミンは哺乳動物では長らく肥満細胞を特徴づけるオータコイドと考えられてきた。典型的な組織肥満細胞のほか血液中の好塩基球,消化管粘膜上皮や皮膚上皮の上皮性肥満細胞(mucosal mast cell, epidermal mastcell)もヒスタミンを放出する。さらに胃壁上皮にはヒスタミンを放出するエンテロクロマフィン細胞に近い細胞群(EC-1ike cell)がある。とくに肥満細胞はほぼすべての器官に分布するので,摘出・手術を含む実験では肥満細胞によるヒスタミンを他と区別することが非常に困難である。事実,初期の摘出脳標品におけるヒスタミン代謝回転に関する実験では組織摘出までの間に肥満細胞由来のヒスタミンをくわえ込んだことを見逃すという混乱があったという(総説1))。肥満細胞のヒスタミンはcompound 40/80によって,放出可能なヒスタミンをほとんど放出してしまうのに対して,神経由来のものは比較的影響をうけない。また,遺伝的に肥満細胞を事実上欠いているマウス個体(W/Wv)***の組織中のヒスタミンは肥満細胞に由来しないと考えられる。これらいろいろな方法を用いた推定では,脳ではおおむね50%が肥満細胞に由来し,他はヒスタミン神経に分布すると考えられている(総説2))。神経性のヒスタミンは代謝回転がきわめて速く,半減期は30分前後という1)。
ヒスタミン代謝回転作用薬:Histamine-N-methyltransferase(HNMT)阻害剤
著者: 藤田道也
ページ範囲:P.502 - P.502
「概説」
脳にはS-アデノシルメチオニンをメチル基供与体としヒスタミンのイミダゾール環のN-メチル化を触媒する酵素ヒスタミン-N-メチルトランスフェラーゼが多量にある1)。脳には他の末梢組織に多いジアミンオキシダーゼが欠如しているのでN-メチル化が唯一の代謝経路であり,強力なヒスタミン取り込み機構もないので,HNMTの阻害によって脳内ヒスタミン濃度が上昇する。
セロトニン減少剤
著者: 長谷川宏幸
ページ範囲:P.503 - P.503
「概説」
セロトニンはトリプトファンから2段階の酵素反応で生成する。第一ステップはトリプトファン水酸化酵素によって触媒され,このステップは律速段階である。トリプトファン水酸化酵素は鉄イオンを要求し,トリプトファン,分子状酸素および還元型ビオプテリン(tetrahydrobiopterin,THBP)の三者を基質とする1原子酸素添加酵素である。トリプトファン水酸化酵素に対して,通常,中枢神経系組織中のトリプトファンとTHBPは飽和していないといわれている(THBPが飽和していない事態は同様にこの還元型プテリンを要求するチロシン水酸化酵素についてもいえる)。p-Chlorophenylalanineは主にトリプトファン水酸化酵素の阻害剤とされている。また2,4-diamino-6-hydroxypyrimidineはTHBP生合成阻害剤として間接的なセロトニン生合成阻害剤である。第二ステップは芳香族-L-アミノ酸脱炭酸酵素によって触媒される。芳香族-L-アミノ酸脱炭酸酵素はカテコールアミン生合成系におけるドーパ(dihydroxyphenylalanine)からドーパミンを生成する酵素と同一であって,基質,組織分布ともに特異性がゆるく,律速もしない。生成したセロトニンは顆粒中に蓄えられ,開口放出される。放出されたセロトニンの一部は再取り込みによって回収される。
セロトニン神経毒
著者: 長谷川宏幸
ページ範囲:P.504 - P.504
「概説」
セロトニン神経毒にはおもに二つのグループが知られている。一つは5,6-または5,7-dihydroxytryptamine(DHT)とその誘導体であり,もう一つはP-chloroamphetamine(PCA),3,4-methylenedioxymethamphetamine(MDMA),fenfluramineなどのアンフェタミン関連物質である。DHT類はセロトニン神経細胞に取り込まれてその細胞を破壊すると考えられている。その細胞破壊の機構については,細胞内における酸化反応において活性酸素を放出するためであるとの考えが有力である。DHT類は比較的特異性が高く,中枢におけるセロトニンニューロンの研究には頻繁に用いられる(Ann. N. Y. Acad. Sci.,Vol.305,1978に詳しい)。とはいえカテコールアミン神経にも影響が出るので使用に当っては注意を要する。一方,アンフェタミン類は初めは神経終末の貯蔵部位からセロトニンのみならずモノアミン類の遊離を促し,可逆的なセロトニン減少から,やがて神経線維の消失へと進む。MDMAは特異的かつ長期にセロトニン神経を変性する。セロトニン神経の神経線維を傷害していく機構についてはほとんどわかっておらず,現段階では,研究の道具としてよりはむしろ研究対象として,関心が寄せられている(Ann. N. Y. Acad, Sci.,Vol.600,1990に詳しい)。
ソマトスタチン減少剤
著者: 浅沼幹人 , 小川紀雄
ページ範囲:P.505 - P.506
「概説」
somatostatin(SS)は下垂体からの成長ホルモン分泌を抑制するホルモンとして視床下部から発見された14個のアミノ酸から成る神経ペプチドである(SS-14)。SSmRNAからSSの前駆体preprosomatostatinが翻訳され,プロセッシングをうけprosomatostatin,さらにSS-14あるいはC末端にSS-14を含む28個のペプチドSS-28が生成される。脳内のSS濃度は視床下部で高いが,含量としては大脳皮質>脳幹>視床下部>視床>小脳に多く,視床下部以外では大部分がSS-14である。SSは脳室内あるいは辺縁系への投与による体軸回転運動誘発,痙攣発作誘発,REM睡眠抑制,体温調節など種々の作用を有しており,キンドリングラットの大脳皮質・辺縁系での増加,Alzheimer型痴呆患者,痴呆を有するParkinson病患者の大脳皮質での低下,Huntington病患者線条体での増加なども認められている。SS濃度はamine,acetylcholine,endorphin,TRH,neuropeptide Y,GABAなどにより様々に変化するが,とくにdopamine(DA)系の変化に伴い二次的に影響される。SS減少作用を有する薬物は,痴呆とSSの関連の研究に頻用されるcysteamineのように,SS系に直接作用すると考えられるものと,DA減少剤のように間接的に作用するものに大別されるであろう。
カルモデュリンアンタゴニスト
著者: 日高弘義 , 小林良二
ページ範囲:P.507 - P.510
カルモデュリンは,1970年に垣内史朗とCheungによって独立に発見された。数多くの研究から,カルモデュリンは細胞内Ca2+信号系のkey stepに位置する多重機能性のカルシウム受容タンパク質であることが判明した。カルモデュリンはすべての真核細胞に普遍的に存在するが,とりわけ神経系(大脳皮質,尾状核,海馬,小脳など)には大量に含まれている。免疫組織学によれば,神経細胞がカルモデュリン抗体によって染色され,ことにシナプス後膜の細胞質側が良く染色されているという。神経軸索では,滑面小胞体,ミトコンドリア,シナプス小胞などが良く染まる。含量がきわめて高いことからも,カルモデュリンは神経系において重大な調節的役割を果たしていると考えられている。ことに,1)やはり神経系に高濃度に存在するCa2+/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼⅡ(CaMキナーゼⅡ)を介する調節機構,2)カルモデュリン依存性タンパク質脱リン酸化酵素(カルシニューリン)を介する調節機構,3)シナプシンⅠ,MAP2,タウ,カルスペクチンなどの細胞骨格系タンパク質を介する調節系の3種は,神経機能調節においては重要である。カルモデュリン拮抗薬の先駆的研究は,本多らのフェノチアジン系薬剤のホスホジエステラーゼ阻害作用についての実験であろう。しかし,この段階では,カルモデュリンとの関連は明らかではなかった。
エタノールアンタゴニスト
著者: 中西頴央
ページ範囲:P.511 - P.512
「概説」
GABA受容体
GABA受容体は電気生理学ならびに薬理学的に二つのサブタイプ,GABAA受容体とGABAB受容体とに分けられる。GABAA受容体はbenzodiazepine受容体およびCl-チャネルと複合体を形成すると考えられている。GABAA受容体複合体が活性化されるとCl-コンダクタンスが増す。GABAA受容体複合体の機能はbenzodiazepines,barbituratesあるいはpcrotoxinなどの結合によって変化する。これら薬物のGABAA受容体への結合はGABAA受容体アンタゴニストbicucullineによって拮抗遮断される。
GABAB受容体はGTP結合蛋白質を介する機構によって間接的に陽イオンコンダクタンスと共役している。GABAB受容体の活性化によって末梢ニューロンでは内向ぎCa電流が抑制され,中枢ニューロンでは外向きK電流が増加する。GABA類似物質baclofenは立体選択的なGABAB受容体アゴニストであり,baclofenの構造類似物質phaclofenは選択的なGABAB受容体アンタゴニストである。
システイン前駆体(システイン増加剤)
著者: 藤田道也
ページ範囲:P.513 - P.513
「概説」
システインはふつう食物に由来するか,体内ではメチオニンの硫黄転移によって生じる。システインはアミノ酸であるからタソパク質の構成成分として重要なのは当然であるが,脳におけるシステインに興味がもたれるのは,1)ある種の神経薬剤に対するその保護作用と,2)それ自体のもつ毒作用,のためである。1)としては,amphetamine(およびp-chloroamphetamine)の投与によるドーパミン減少や6-hydroxydopamineの障害作用に対するシステインの保護作用があげられ,2)としてはシステインの投与による幼若マウス網膜・視床下部の壊死,脳の萎縮,嗜眠・けいれんなどの誘発があげられる。このようなシステインの毒作用の一部は細胞外で起こる可能性があり1),また細胞外でのSH基の酸化を防ぐ意味でも細胞内に達して初めてシステインに転化するような前駆体が望まれる。
Ⅳ.臨床応用薬
全身麻酔薬
著者: 小栗顕二
ページ範囲:P.516 - P.521
「概説」
1.麻酔薬の定義
“麻酔薬”を物理化学的知識を基礎にして定義することはできない。薬理学的にも難しい。経験主義的,臨床医学的な言葉で,あえて表現するならば,「中枢神経系に作用して手術に適した,全体として抑制的な中枢神経環境を作る薬物」ということになろうか。臨床上,麻酔に要求される因子は意識消失,鎮痛,不動化(あるいは筋弛緩)で,これに,人によっては侵害刺激によって駆動されるカテコラミンの遊離を抑制することを加える。これまでの麻酔薬開発の歴史の中で,上記の因子を単独の薬物で満足できたものは,ジエチルエーテルとメトキシフルレンであった。しかし,前者は爆発性があることと,麻酔の導入に時間を要することが理由で使用されなくなり,後者は腎毒性があることが理由で発売されなくなった。現在では上記の因子をいくつかの薬物で分担する,いわゆる“バランス麻酔”が一般に受け入れられている。したがって,明らかにhypnoticaやanalgeticaが麻酔薬の中に組み込まれている。定義があいまいにならざるを得ないのである。また,全身麻酔薬として用いられている薬物は,必ずしも常に中枢神経抑制薬ではなく,局所脳において,また全体として明らかに脳の活動亢進が起こっていると考えられる状態もあり得る。
催眠鎮静薬
著者: 諸治隆嗣 , 勝浦五郎
ページ範囲:P.525 - P.528
「概説」
不眠症は不眠のみを主訴とする狭義の不眠症のほかに,精神分裂病や躁うつ病などいろいろな精神障害,さらに各種の身体疾患の際にもしばしば認められる症状である。催眠薬(「睡眠導入薬」とも呼ばれることがある)は,不眠を訴えるこうした患者の治療に欠くことのできないものである。しかし,精神障害に伴う不眠の場合,原疾患の経過が催眠薬の必要性を左右する。すなわち,原疾患の軽快あるいは寛解によって不眠も軽滅するので,原疾患に対する治療が常に優先することになる。ところが,原疾患が催眠薬によりさらに悪化するといったこともありうる。このように,不眠症の研究と治療は単に患者を不快な不眠から解放するだけでなく,不眠を呈する原疾患の病態解明にも寄与するところが多い。
現在,様々な催眠鎮静薬が不眠の治療に用いられている。強い不安や焦躁感を伴う不眠の患者には催眠作用を有する抗不安薬,うつ病患者の不眠には催眠作用のある抗うつ薬,精神運動興奮を伴う強度の不眠の患者には強い催眠・鎮静作用のある抗精神病薬が用いられている。
抗うつ薬
著者: 本橋伸高 , 高橋清久
ページ範囲:P.529 - P.531
「概説」
抗うつ薬は偶然に発見された。一つには,抗結核薬であるipriniazidに気分高揚作用が見出され,この薬が抗うつ薬として用いられるようになった。ipriniazidにはmonoamine oxidase(MAO)阻害作用があることから,MAO阻害剤が臨床的に用いられるようになった1)。他方,抗精神病薬の開発中に発見されたimipramineに抗うつ効果のあることが見出された。この薬物にはセロトニン(5-HT)とノルアドレナリン(NA)の取り込み阻害作用のあることが明らかになり,同様の構造を持つ三環系抗うつ薬amitriptyline,clomipramine,desipramineなどが広く用いられるようになった1)。さらに,非三環系の抗うつ薬が開発され,副作用の少なさと速効性を特徴とすることで,数多く処方されるようになっている。これらのなかには,5-HTやNAの取り込み阻害作用がほとんどないものもあり,抗うつ薬の作用機序を考えるのが難しくなっている。わが国で用いられているものでは,四環系の薬物であるmaprotilineとmianserinがあり,また,欧米では,fluoxetine,trazodone,nomifensineなどの薬物が用いられている。現在MAO阻害剤はわが国ではほとんど用いられていない。
抗てんかん薬
著者: 笹野友寿 , 渡辺昌祐
ページ範囲:P.532 - P.534
「概説」
現在,抗てんかん薬の作用機序として,GABA受容体およびbenzodiazepine受容体との関連性が注目されている。
GABA(γ-aminobutyric acid)は中枢神経系における主要な抑制性神経伝達物質である。GABA受容体は,antagonistのbicucullineによって抑制されるGABAA受容体と,bicucullineに非感受性のGAGAB受容体に分類される。
中枢神経系刺激薬
著者: 融道男 , 吉川武男
ページ範囲:P.535 - P.536
「概説」
中枢神経系の諸機能を刺激する薬物のうち,大脳に作用し,覚醒・精神興奮・自発運動亢進を生ずるものをまとめた。この中にはxanthine誘導体(caffeine,theophyllineなど),nicotineなども含めうるが,ここでは,より強力な刺激剤で中枢ドーパミン(DA)を介して作用する3種の薬物について記述した。
パーキンソン病治療薬
著者: 小川紀雄
ページ範囲:P.537 - P.539
「概説」
中枢神経疾患の治療薬の中で,パーキンソン病治療薬はもっとも理論的に成功している。病態や治療薬を考える上ではシナプス部における神経伝達物質とレセプターの変化の把握が重要である。パーキンソン病の主病変は黒質-線条体のdopamine(DA)神経の変性脱落であるが,それ以外にも線条体での相対的なacetylcholine(ACh)系の機能亢進,さらには,陳旧例におけるdopamine-β-hydroxylase低下によるnoradrenaline(NA)の低下など多彩な生化学的変化が知られている。表1に作用機序による治療薬の分類をあげたが,パーキンソン病治療薬は生化学的変化を基礎に理論的に創薬されている。本病の薬物療法は,できるだけ効果をあげ副作用を少なくするために「低用量・多剤併用」が基本である1)。
パーキンソンニズム誘発剤(MTPT)
著者: 直井信 , 永津俊治
ページ範囲:P.540 - P.541
「概説」
1-methyl-4-pheny1-1,2,3,6-tetrahydropyridine(MPTP)は人工ヘロインmeperidine(1-methyl-4-phenyl-4-piperidinecarboxylic acid ethyl ester)の合成中誤って合成され,これを注射したヒトに5から15日以内にParkinsonism(PI)を誘発する1,2)。MPTPによるPIの臨床症状は自然発症のParkinson's disease(PDに類似し,病理的には黒質に限局したドーパミン(DA)ニューロンの細胞変性が見られた。自然発症のPDでは,黒質線条体のDA量が低下するだけでなく,生合成に関与するチロシン水酸化酵素(TH)とDOPA脱炭酸酵素(DDC)の活性低下がある。ヒトのMPTPにより誘発されたPIでは脳脊髄液のDAの代謝産物ホモバレリン酸(HVA)量の低下がありPDと同様のDA生合成の阻害があると考えられる。長年慢性に経過したPDではノルエピネフリン(NE)系,セロトニン(5-HT)系の神経障害が示唆されている。MPTP-PIの脳脊髄液ではNEの代謝物4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニルエチレングリコール(MHPG)は増加し5-THの代謝物5-ヒドロキシインドール酢酸(5-HIAA)は変化しなかった。
アルツハイマー症治療薬:THA(=9-amino-1,2,3,4-tetrahydroacridine)/アセチルコリンエステラーゼ阻害剤
著者: 石井毅
ページ範囲:P.542 - P.543
「概説」
アルツハイマー病(AD)の原因は不明であるが,治療のストラテジーとして,その神経伝達物質の異常に対する薬物投与が考えられる。ADの神経伝達異常にはacetylcholine(ACh)系がもっとも有名だが,そのほかnorepinephrine(NE)系,serotonin(5-HT)系,各種アミノ酸,peptide系異常などが見出されている。
健忘症誘発剤/GABA受容体アンタゴニスト
著者: 諸治隆嗣 , 笠茂公弘
ページ範囲:P.544 - P.544
「概説」
記憶は,①記銘(memorizing,learning),②保持(retention,storage),③再生(reproduction)または追想(recall),④再認(recognition)の四つの要素から構成されている(行動主義心理学では③や④をretrievalと呼んでいる)。一方,健忘(amnesia)とは一定の事実あるいは一定期間の経験を追想できない状態であって,記銘,保持および再生のうちの少なくとも一つの障害によって生ずると考えられる。
Benzodiazepine系薬物(BZPs)が臨床的に健忘を誘発することが発見されて以来,動物にそのモデルを求め,BZPsによる健忘の発現機序に関する研究が行われてきた1,2)。ところが,BZP受容体の少なくとも1/3はγ-aminobutyric acid(GABA)A受容体,barbiturate認識部位およびClionophoreと複合体を形成しているので,記憶あるいは健忘とGABA作動系ニューロンとの関連が注目されている。
拒食症誘発剤
著者: 藤田道也
ページ範囲:P.545 - P.548
「概説」
神経性拒食症と過食症の発病と進行は複雑であり,単一の神経伝達系によるものとは思われない。少なくとも,セロトニン作動系,ドーパミン作動系,アドレナリン作動系,オピオイド作動系が関与している。したがって,これらの受容体に作用する薬物はそれなりの効果をもつことになる(各論参照)。amphetamine投与の急性症状として食欲不振のあることはすでに1938年に知られていた7)。amphetamineの作用機構は外側視床下部のドーパミン受容体ないしβ-アドレノセプターを介するものだと考えられている8)。しかし,さらに最近になって,同部位のセロトニン受容体の関与も示唆されている5)。amphetamineに似た作用をもつmazindolの作用も視床下部のセロトニン系を介するものと考えられている5)。
セロトニン作動性拒食症誘発剤(serotoninergic anorectic)とは5-HT伝達を促進し,かつその拒食効果が5-HT受容体アンタゴニストによって抑制されるものを指す。5-HT,m-CPP,DOI,quipazine,RU-24969などがその例であろう。間接的セロトニンアゴニストと言えるものにセロトニン取り込み阻害剤がある。
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特集 脂質ワールド
67巻2号(2016年4月発行)
特集 細胞の社会学─細胞間で繰り広げられる協調と競争
67巻1号(2016年2月発行)
特集 記憶ふたたび
66巻6号(2015年12月発行)
特集 グリア研究の最先端
66巻5号(2015年10月発行)
増大特集 細胞シグナル操作法
66巻4号(2015年8月発行)
特集 新興・再興感染症と感染症対策
66巻3号(2015年6月発行)
特集 進化と発生からみた生命科学
66巻2号(2015年4月発行)
特集 使える最新ケミカルバイオロジー
66巻1号(2015年2月発行)
特集 脳と心の謎はどこまで解けたか
65巻6号(2014年12月発行)
特集 エピジェネティクスの今
65巻5号(2014年10月発行)
増大特集 生命動態システム科学
65巻4号(2014年8月発行)
特集 古典的代謝経路の新しい側面
65巻3号(2014年6月発行)
特集 器官の発生と再生の基礎
65巻2号(2014年4月発行)
特集 細胞の少数性と多様性に挑む―シングルセルアナリシス
65巻1号(2014年2月発行)
特集 精神疾患の病理機構
64巻6号(2013年12月発行)
特集 顕微鏡で物を見ることの新しい動き
64巻5号(2013年10月発行)
増大特集 細胞表面受容体
64巻4号(2013年8月発行)
特集 予測と意思決定の神経科学
64巻3号(2013年6月発行)
特集 細胞接着の制御
64巻2号(2013年4月発行)
特集 特殊な幹細胞としての骨格筋サテライト細胞
64巻1号(2013年2月発行)
特集 神経回路の計測と操作
63巻6号(2012年12月発行)
特集 リンパ管
63巻5号(2012年10月発行)
特集 細胞の分子構造と機能―核以外の細胞小器官
63巻4号(2012年8月発行)
特集 質感脳情報学への展望
63巻3号(2012年6月発行)
特集 細胞極性の制御
63巻2号(2012年4月発行)
特集 RNA干渉の実現化に向けて
63巻1号(2012年2月発行)
特集 小脳研究の課題(2)
62巻6号(2011年12月発行)
特集 コピー数変異
62巻5号(2011年10月発行)
特集 細胞核―構造と機能
62巻4号(2011年8月発行)
特集 小脳研究の課題
62巻3号(2011年6月発行)
特集 インフラマソーム
62巻2号(2011年4月発行)
特集 筋ジストロフィーの分子病態から治療へ
62巻1号(2011年2月発行)
特集 摂食制御の分子過程
61巻6号(2010年12月発行)
特集 細胞死か腫瘍化かの選択
61巻5号(2010年10月発行)
特集 シナプスをめぐるシグナリング
61巻4号(2010年8月発行)
特集 miRNA研究の最近の進歩
61巻3号(2010年6月発行)
特集 SNARE複合体-膜融合の機構
61巻2号(2010年4月発行)
特集 糖鎖のかかわる病気:発症機構,診断,治療に向けて
61巻1号(2010年2月発行)
特集 脳科学のモデル実験動物
60巻6号(2009年12月発行)
特集 ユビキチン化による生体機能の調節
60巻5号(2009年10月発行)
特集 伝達物質と受容体
60巻4号(2009年8月発行)
特集 睡眠と脳回路の可塑性
60巻3号(2009年6月発行)
特集 脳と糖脂質
60巻2号(2009年4月発行)
特集 感染症の現代的課題
60巻1号(2009年2月発行)
特集 遺伝子-脳回路-行動
59巻6号(2008年12月発行)
特集 mTORをめぐるシグナルタンパク
59巻5号(2008年10月発行)
特集 現代医学・生物学の仮説・学説2008
59巻4号(2008年8月発行)
特集 免疫学の最近の動向
59巻3号(2008年6月発行)
特集 アディポゲネシス
59巻2号(2008年4月発行)
特集 細胞外基質-研究の新たな展開
59巻1号(2008年2月発行)
特集 コンピュータと脳
58巻6号(2007年12月発行)
特集 グリケーション(糖化)
58巻5号(2007年10月発行)
特集 タンパク質間相互作用
58巻4号(2007年8月発行)
特集 嗅覚受容の分子メカニズム
58巻3号(2007年6月発行)
特集 骨の形成と破壊
58巻2号(2007年4月発行)
特集 シナプス後部構造の形成・機構と制御
58巻1号(2007年2月発行)
特集 意識―脳科学からのアプローチ
57巻6号(2006年12月発行)
特集 血管壁
57巻5号(2006年10月発行)
特集 生物進化の分子マップ
57巻4号(2006年8月発行)
特集 脳科学が求める先端技術
57巻3号(2006年6月発行)
特集 ミエリン化の機構とその異常
57巻2号(2006年4月発行)
特集 膜リサイクリング
57巻1号(2006年2月発行)
特集 こころと脳:とらえがたいものを科学する
56巻6号(2005年12月発行)
特集 構造生物学の現在と今後の展開
56巻5号(2005年10月発行)
特集 タンパク・遺伝子からみた分子病―新しく解明されたメカニズム
56巻4号(2005年8月発行)
特集 脳の遺伝子―どこでどのように働いているのか
56巻3号(2005年6月発行)
特集 Naチャネル
56巻2号(2005年4月発行)
特集 味覚のメカニズムに迫る
56巻1号(2005年2月発行)
特集 情動―喜びと恐れの脳の仕組み
55巻6号(2004年12月発行)
特集 脳の深部を探る
55巻5号(2004年10月発行)
特集 生命科学のNew Key Word
55巻4号(2004年8月発行)
特集 心筋研究の最前線
55巻3号(2004年6月発行)
特集 分子進化学の現在
55巻2号(2004年4月発行)
特集 アダプタータンパク
55巻1号(2004年2月発行)
特集 ニューロンと脳
54巻6号(2003年12月発行)
特集 オートファジー
54巻5号(2003年10月発行)
特集 創薬ゲノミクス・創薬プロテオミクス・創薬インフォマティクス
54巻4号(2003年8月発行)
特集 ラフトと細胞機能
54巻3号(2003年6月発行)
特集 クロマチン
54巻2号(2003年4月発行)
特集 樹状突起
54巻1号(2003年2月発行)
53巻6号(2002年12月発行)
特集 ゲノム全解読とポストゲノムの問題点
53巻5号(2002年10月発行)
特集 加齢の克服―21世紀の課題
53巻4号(2002年8月発行)
特集 一価イオンチャネル
53巻3号(2002年6月発行)
特集 細胞質分裂
53巻2号(2002年4月発行)
特集 RNA
53巻1号(2002年2月発行)
連続座談会 脳とこころ―21世紀の課題
52巻6号(2001年12月発行)
特集 血液脳関門研究の最近の進歩
52巻5号(2001年10月発行)
特集 モチーフ・ドメインリスト
52巻4号(2001年8月発行)
特集 骨格筋研究の新展開
52巻3号(2001年6月発行)
特集 脳の発達に関与する分子機構
52巻2号(2001年4月発行)
特集 情報伝達物質としてのATP
52巻1号(2001年2月発行)
連続座談会 脳を育む
51巻6号(2000年12月発行)
特集 機械的刺激受容の分子機構と細胞応答
51巻5号(2000年10月発行)
特集 ノックアウトマウスリスト
51巻4号(2000年8月発行)
特集 臓器(組織)とアポトーシス
51巻3号(2000年6月発行)
特集 自然免疫における異物認識と排除の分子機構
51巻2号(2000年4月発行)
特集 細胞極性の形成機序
51巻1号(2000年2月発行)
特集 脳を守る21世紀生命科学の展望
50巻6号(1999年12月発行)
特集 細胞内輸送
50巻5号(1999年10月発行)
特集 病気の分子細胞生物学
50巻4号(1999年8月発行)
特集 トランスポーターの構造と機能協関
50巻3号(1999年6月発行)
特集 時間生物学の新たな展開
50巻2号(1999年4月発行)
特集 リソソーム:最近の研究
50巻1号(1999年2月発行)
連続座談会 脳を守る
49巻6号(1998年12月発行)
特集 発生・分化とホメオボックス遺伝子
49巻5号(1998年10月発行)
特集 神経系に作用する薬物マニュアル1998
49巻4号(1998年8月発行)
特集 プロテインキナーゼCの多様な機能
49巻3号(1998年6月発行)
特集 幹細胞研究の新展開
49巻2号(1998年4月発行)
特集 血管―新しい観点から
49巻1号(1998年2月発行)
特集 言語の脳科学
48巻6号(1997年12月発行)
特集 軸索誘導
48巻5号(1997年10月発行)
特集 受容体1997
48巻4号(1997年8月発行)
特集 マトリックス生物学の最前線
48巻3号(1997年6月発行)
特集 開口分泌のメカニズムにおける新しい展開
48巻2号(1997年4月発行)
特集 最近のMAPキナーゼ系
48巻1号(1997年2月発行)
特集 21世紀の脳科学
47巻6号(1996年12月発行)
特集 老化
47巻5号(1996年10月発行)
特集 器官―その新しい視点
47巻4号(1996年8月発行)
特集 エンドサイトーシス
47巻3号(1996年6月発行)
特集 細胞分化
47巻2号(1996年4月発行)
特集 カルシウム動態と細胞機能
47巻1号(1996年2月発行)
特集 神経科学の最前線
46巻6号(1995年12月発行)
特集 病態を変えたよく効く医薬
46巻5号(1995年10月発行)
特集 遺伝子・タンパク質のファミリー・スーパーファミリー
46巻4号(1995年8月発行)
特集 ストレス蛋白質
46巻3号(1995年6月発行)
特集 ライソゾーム
46巻2号(1995年4月発行)
特集 プロテインホスファターゼ―最近の進歩
46巻1号(1995年2月発行)
特集 神経科学の謎
45巻6号(1994年12月発行)
特集 ミトコンドリア
45巻5号(1994年10月発行)
特集 動物の行動機能テスト―個体レベルと分子レベルを結ぶ
45巻4号(1994年8月発行)
特集 造血の機構
45巻3号(1994年6月発行)
特集 染色体
45巻2号(1994年4月発行)
特集 脳と分子生物学
45巻1号(1994年2月発行)
特集 グルコーストランスポーター
44巻6号(1993年12月発行)
特集 滑面小胞体をめぐる諸問題
44巻5号(1993年10月発行)
特集 現代医学・生物学の仮説・学説
44巻4号(1993年8月発行)
特集 細胞接着
44巻3号(1993年6月発行)
特集 カルシウムイオンを介した調節機構の新しい問題点
44巻2号(1993年4月発行)
特集 蛋白質の細胞内転送とその異常
44巻1号(1993年2月発行)
座談会 脳と遺伝子
43巻6号(1992年12月発行)
特集 成長因子受容体/最近の進歩
43巻5号(1992年10月発行)
特集 〈研究室で役に立つ細胞株〉
43巻4号(1992年8月発行)
特集 細胞機能とリン酸化
43巻3号(1992年6月発行)
特集 血管新生
43巻2号(1992年4月発行)
特集 大脳皮質発達の化学的側面
43巻1号(1992年2月発行)
特集 意識と脳
42巻6号(1991年12月発行)
特集 細胞活動の日周リズム
42巻5号(1991年10月発行)
特集 神経系に作用する薬物マニュアル
42巻4号(1991年8月発行)
特集 開口分泌の細胞内過程
42巻3号(1991年6月発行)
特集 ペルオキシソーム/最近の進歩
42巻2号(1991年4月発行)
特集 脳の移植と再生
42巻1号(1991年2月発行)
特集 脳と免疫
41巻6号(1990年12月発行)
特集 注目の実験モデル動物
41巻5号(1990年10月発行)
特集 LTPとLTD:その分子機構
41巻4号(1990年8月発行)
特集 New proteins
41巻3号(1990年6月発行)
特集 シナプスの形成と動態
41巻2号(1990年4月発行)
特集 細胞接着
41巻1号(1990年2月発行)
特集 発がんのメカニズム/最近の知見
40巻6号(1989年12月発行)
特集 ギャップ結合
40巻5号(1989年10月発行)
特集 核内蛋白質
40巻4号(1989年8月発行)
特集 研究室で役に立つ新しい試薬
40巻3号(1989年6月発行)
特集 細胞骨格異常
40巻2号(1989年4月発行)
特集 大脳/神経科学からのアプローチ
40巻1号(1989年2月発行)
特集 分子進化
39巻6号(1988年12月発行)
特集 細胞内における蛋白質局在化機構
39巻5号(1988年10月発行)
特集 細胞測定法マニュアル
39巻4号(1988年8月発行)
特集 細胞外マトリックス
39巻3号(1988年6月発行)
特集 肺の微細構造と機能
39巻2号(1988年4月発行)
特集 生体運動の分子機構/研究の発展
39巻1号(1988年2月発行)
特集 遺伝子疾患解析の発展
38巻6号(1987年12月発行)
-チャンネルの最近の動向
38巻5号(1987年10月発行)
特集 細胞生物学における免疫実験マニュアル
38巻4号(1987年8月発行)
特集 視覚初期過程の分子機構
38巻3号(1987年6月発行)
特集 人間の脳
38巻2号(1987年4月発行)
特集 体液カルシウムのホメオスタシス
38巻1号(1987年2月発行)
特集 医学におけるブレイクスルー/基礎研究からの挑戦
37巻6号(1986年12月発行)
特集 神経活性物質受容体と情報伝達
37巻5号(1986年10月発行)
特集 中間径フィラメント
37巻4号(1986年8月発行)
特集 細胞生物学実験マニュアル
37巻3号(1986年6月発行)
特集 脳の化学的トポグラフィー
37巻2号(1986年4月発行)
特集 血小板凝集
37巻1号(1986年2月発行)
特集 脳のモデル
36巻6号(1985年12月発行)
特集 脂肪組織
36巻5号(1985年10月発行)
特集 細胞分裂をめぐって
36巻4号(1985年8月発行)
特集 神経科学実験マニュアル
36巻3号(1985年6月発行)
特集 血管内皮細胞と微小循環
36巻2号(1985年4月発行)
特集 肝細胞と胆汁酸分泌
36巻1号(1985年2月発行)
特集 Transmembrane Control
35巻6号(1984年12月発行)
特集 細胞毒マニュアル—実験に用いられる細胞毒の知識
35巻5号(1984年10月発行)
特集 中枢神経系の再構築
35巻4号(1984年8月発行)
特集 ゲノムの構造
35巻3号(1984年6月発行)
特集 神経科学の仮説
35巻2号(1984年4月発行)
特集 哺乳類の初期発生
35巻1号(1984年2月発行)
特集 細胞生物学の現状と展望
34巻6号(1983年12月発行)
特集 蛋白質の代謝回転
34巻5号(1983年10月発行)
特集 受容・応答の膜分子論
34巻4号(1983年8月発行)
特集 コンピュータによる生物現象の再構成
34巻3号(1983年6月発行)
特集 細胞の極性
34巻2号(1983年4月発行)
特集 モノアミン系
34巻1号(1983年2月発行)
特集 腸管の吸収機構
33巻6号(1982年12月発行)
特集 低栄養と生体機能
33巻5号(1982年10月発行)
特集 成長因子
33巻4号(1982年8月発行)
特集 リン酸化
33巻3号(1982年6月発行)
特集 神経発生の基礎
33巻2号(1982年4月発行)
特集 細胞の寿命と老化
33巻1号(1982年2月発行)
特集 細胞核
32巻6号(1981年12月発行)
特集 筋小胞体研究の進歩
32巻5号(1981年10月発行)
特集 ペプチド作働性シナプス
32巻4号(1981年8月発行)
特集 膜の転送
32巻3号(1981年6月発行)
特集 リポプロテイン
32巻2号(1981年4月発行)
特集 チャネルの概念と実体
32巻1号(1981年2月発行)
特集 細胞骨格
31巻6号(1980年12月発行)
特集 大脳の機能局在
31巻5号(1980年10月発行)
特集 カルシウムイオン受容タンパク
31巻4号(1980年8月発行)
特集 化学浸透共役仮説
31巻3号(1980年6月発行)
特集 赤血球膜の分子構築
31巻2号(1980年4月発行)
特集 免疫系の情報識別
31巻1号(1980年2月発行)
特集 ゴルジ装置
30巻6号(1979年12月発行)
特集 細胞間コミニケーション
30巻5号(1979年10月発行)
特集 In vitro運動系
30巻4号(1979年8月発行)
輸送系の調節
30巻3号(1979年6月発行)
特集 網膜の構造と機能
30巻2号(1979年4月発行)
特集 神経伝達物質の同定
30巻1号(1979年2月発行)
特集 生物物理学の進歩—第6回国際生物物理学会議より
29巻6号(1978年12月発行)
特集 最近の神経科学から
29巻5号(1978年10月発行)
特集 下垂体:前葉
29巻4号(1978年8月発行)
特集 中枢のペプチド
29巻3号(1978年6月発行)
特集 心臓のリズム発生
29巻2号(1978年4月発行)
特集 腎機能
29巻1号(1978年2月発行)
特集 膜脂質の再検討
28巻6号(1977年12月発行)
特集 青斑核
28巻5号(1977年10月発行)
特集 小胞体
28巻4号(1977年8月発行)
特集 微小管の構造と機能
28巻3号(1977年6月発行)
特集 神経回路網と脳機能
28巻2号(1977年4月発行)
特集 生体の修復
28巻1号(1977年2月発行)
特集 生体の科学の現状と動向
27巻6号(1976年12月発行)
特集 松果体
27巻5号(1976年10月発行)
特集 遺伝マウス・ラット
27巻4号(1976年8月発行)
特集 形質発現における制御
27巻3号(1976年6月発行)
特集 生体と化学的環境
27巻2号(1976年4月発行)
特集 分泌腺
27巻1号(1976年2月発行)
特集 光受容
26巻6号(1975年12月発行)
特集 自律神経と平滑筋の再検討
26巻5号(1975年10月発行)
特集 脳のプログラミング
26巻4号(1975年8月発行)
特集 受精機構をめぐつて
26巻3号(1975年6月発行)
特集 細胞表面と免疫
26巻2号(1975年4月発行)
特集 感覚有毛細胞
26巻1号(1975年2月発行)
特集 体内のセンサー
25巻5号(1974年12月発行)
特集 生体膜—その基本的課題
25巻4号(1974年8月発行)
特集 伝達物質と受容物質
25巻3号(1974年6月発行)
特集 脳の高次機能へのアプローチ
25巻2号(1974年4月発行)
特集 筋細胞の分化
25巻1号(1974年2月発行)
特集 生体の科学 展望と夢
24巻6号(1973年12月発行)
24巻5号(1973年10月発行)
24巻4号(1973年8月発行)
24巻3号(1973年6月発行)
24巻2号(1973年4月発行)
24巻1号(1973年2月発行)
23巻6号(1972年12月発行)
23巻5号(1972年10月発行)
23巻4号(1972年8月発行)
23巻3号(1972年6月発行)
23巻2号(1972年4月発行)
23巻1号(1972年2月発行)
22巻6号(1971年12月発行)
22巻5号(1971年10月発行)
22巻4号(1971年8月発行)
22巻3号(1971年6月発行)
22巻2号(1971年4月発行)
22巻1号(1971年2月発行)
21巻7号(1970年12月発行)
21巻6号(1970年10月発行)
21巻4号(1970年8月発行)
特集 代謝と機能
21巻5号(1970年8月発行)
21巻3号(1970年6月発行)
21巻2号(1970年4月発行)
21巻1号(1970年2月発行)
20巻6号(1969年12月発行)
20巻5号(1969年10月発行)
20巻4号(1969年8月発行)
20巻3号(1969年6月発行)
20巻2号(1969年4月発行)
20巻1号(1969年2月発行)
19巻6号(1968年12月発行)
19巻5号(1968年10月発行)
19巻4号(1968年8月発行)
19巻3号(1968年6月発行)
19巻2号(1968年4月発行)
19巻1号(1968年2月発行)
18巻6号(1967年12月発行)
18巻5号(1967年10月発行)
18巻4号(1967年8月発行)
18巻3号(1967年6月発行)
18巻2号(1967年4月発行)
18巻1号(1967年2月発行)
17巻6号(1966年12月発行)
17巻5号(1966年10月発行)
17巻4号(1966年8月発行)
17巻3号(1966年6月発行)
17巻2号(1966年4月発行)
17巻1号(1966年2月発行)
16巻6号(1965年12月発行)
16巻5号(1965年10月発行)
16巻4号(1965年8月発行)
16巻3号(1965年6月発行)
16巻2号(1965年4月発行)
16巻1号(1965年2月発行)
15巻6号(1964年12月発行)
特集 生体膜その3
15巻5号(1964年10月発行)
特集 生体膜その2
15巻4号(1964年8月発行)
特集 生体膜その1
15巻3号(1964年6月発行)
特集 第13回日本生理科学連合シンポジウム
15巻2号(1964年4月発行)
15巻1号(1964年2月発行)
14巻6号(1963年12月発行)
特集 興奮收縮伝関
14巻5号(1963年10月発行)
14巻4号(1963年8月発行)
14巻3号(1963年6月発行)
14巻1号(1963年2月発行)
特集 第9回中枢神経系の生理学シンポジウム
14巻2号(1963年2月発行)
13巻6号(1962年12月発行)
13巻5号(1962年10月発行)
特集 生物々理—生理学生物々理若手グループ第1回ミーティングから
13巻4号(1962年8月発行)
13巻3号(1962年6月発行)
13巻2号(1962年4月発行)
Symposium on Permeability of Biological Membranes
13巻1号(1962年2月発行)
12巻6号(1961年12月発行)
12巻5号(1961年10月発行)
12巻4号(1961年8月発行)
12巻3号(1961年6月発行)
12巻2号(1961年4月発行)
12巻1号(1961年2月発行)
11巻6号(1960年12月発行)
Symposium On Active Transport
11巻5号(1960年10月発行)
11巻4号(1960年8月発行)
11巻3号(1960年6月発行)
11巻2号(1960年4月発行)
11巻1号(1960年2月発行)
10巻6号(1959年12月発行)
10巻5号(1959年10月発行)
10巻4号(1959年8月発行)
10巻3号(1959年6月発行)
10巻2号(1959年4月発行)
10巻1号(1959年2月発行)
8巻6号(1957年12月発行)
8巻5号(1957年10月発行)
特集 酵素と生物
8巻4号(1957年8月発行)
8巻3号(1957年6月発行)
8巻2号(1957年4月発行)
8巻1号(1957年2月発行)