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文献詳細

雑誌文献

生体の科学42巻5号

1991年10月発行

文献概要

特集 神経系に作用する薬物マニュアル Ⅳ.臨床応用薬

全身麻酔薬

著者: 小栗顕二1

所属機関: 1香川医科大学麻酔・救急医学講座

ページ範囲:P.516 - P.521

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 「概説」
 1.麻酔薬の定義
“麻酔薬”を物理化学的知識を基礎にして定義することはできない。薬理学的にも難しい。経験主義的,臨床医学的な言葉で,あえて表現するならば,「中枢神経系に作用して手術に適した,全体として抑制的な中枢神経環境を作る薬物」ということになろうか。臨床上,麻酔に要求される因子は意識消失,鎮痛,不動化(あるいは筋弛緩)で,これに,人によっては侵害刺激によって駆動されるカテコラミンの遊離を抑制することを加える。これまでの麻酔薬開発の歴史の中で,上記の因子を単独の薬物で満足できたものは,ジエチルエーテルとメトキシフルレンであった。しかし,前者は爆発性があることと,麻酔の導入に時間を要することが理由で使用されなくなり,後者は腎毒性があることが理由で発売されなくなった。現在では上記の因子をいくつかの薬物で分担する,いわゆる“バランス麻酔”が一般に受け入れられている。したがって,明らかにhypnoticaやanalgeticaが麻酔薬の中に組み込まれている。定義があいまいにならざるを得ないのである。また,全身麻酔薬として用いられている薬物は,必ずしも常に中枢神経抑制薬ではなく,局所脳において,また全体として明らかに脳の活動亢進が起こっていると考えられる状態もあり得る。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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